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「国と東電は3800万支払え」原発訴訟「想定外」の地裁判決

前橋地裁21号法廷・原道子裁判長 ©共同通信社

 福島第一原発事故は、東京電力が巨大津波を予見できたのに対策を怠ったため起きた。国も「同罪」――。前橋地裁は3月17日、原発事故の原因を人災と断定し、国と東電に対して避難者ら62人に総額3855万円を賠償するよう命じる判決を言い渡した。福島県からの原発避難者ら約1万2000人が全国20カ所の裁判所で起こした集団訴訟で初めての判決だった。

 司法担当記者が解説する。

「大規模な訴訟では通常、口頭弁論は2~3カ月に1回程度しか開かれませんが、原道子裁判長(59)は月1回という異例のハイペースで裁判を進めました。『自分が裁判長であるうちに判決を下したい』という意図が明確に読み取れたため、記者の間では『原告が何らか勝つだろう』とは予想されていました」

 判決は、国の地震調査機関が02年に三陸沖大津波を予測する見解を出し、東電は実際に15メートル超の津波を試算していたのに、非常用電源の高台設置といった対策を講じなかったとして「東電は安全性より経済的合理性を優先した」と責任を認めた。

 だが、国の賠償責任まで認めた点は「想定外」と受け止められた。

「原子力損害賠償法は、原発事故が起きた際の賠償責任は一義的に電力会社が負うと規定しています。国も同様の主張をしてきましたが、判決は『国の責任は東電に比べ補充的とは言えず、賠償額は同額だ』と指摘した。国策として原発を推進してきたのだから、責任も同じだという考えが根底にあるようです」(同前)

 もともと集団訴訟は、福島からの避難者が「加害者側が決めた基準に従った補償しか得られないのはおかしい」と疑問を抱いたことから、各地で起こされてきた。判決はこの疑問に応える形となったが、「従来の司法判断から逸脱している」との批判もある。

 国家賠償訴訟に詳しい元裁判官は言う。

「国の不作為が違法と認められた裁判は、過去にじん肺被害、アスベスト被害などの例があります。これらは実際に被害が生じているのに、国が対策を講じなかった点が違法とされました。今回は震災前に原発事故が起きていたわけではなく、高裁で取り消される余地は大いにあります」

 未曽有の事故の責任を巡る議論はしばらく続きそうだ。

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