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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2016/11/19

咲き誇る花は散るからこそに美しい
――後藤又兵衛はドラマと小説でここが違う

genre : エンタメ, 読書

 ずっとダジャレタイトルで通してきたこのコラムだが、今回だけは捻りなし。だってこんなにピッタリの歌詞を、ムリにダジャレにする必要なんかないじゃないか、なあ?

 ってことで、大河ドラマ『真田丸』もいよいよ佳境である。前回は毛利勝永を取り上げたので、今回はもちろん後藤又兵衛。当たり前の話だが、大坂の陣を描いた小説には後藤又兵衛と真田信繁は必ず登場する。なので今回は複数の小説で、又兵衛と信繁のからみの場面を比べてみよう。

 そもそも、ドラマと小説では又兵衛のキャラに違いがある。ドラマの又兵衛は哀川翔のイメージもあり、豪快な荒くれ者って感じだけど、小説では尊敬される大人物という造形が多い。司馬遼太郎『城塞』(文藝春秋『司馬遼太郎全集』28-29)や、今年出た矢野隆『生きる故 「大坂の陣」異聞』(PHP研究所)での又兵衛は、豊臣秀頼が最も信頼する人物として描かれている。まあ、『城塞』の又兵衛は少々荒っぽいが。

 初めての軍議で信繁が京まで討って出ることを主張した際、ドラマでは又兵衛は反対したが、小説の又兵衛は信繁を支持するケースがほとんど。たとえば風野真知雄『後藤又兵衛』(文春文庫)と司馬遼太郎『城塞』はともに、宇治と瀬田に兵を出すべしという信繁の言葉に又兵衛は真っ先に賛成し、自分に一、二万の兵をくれれれば真田と一緒にこうしてああしてと、具体的な戦略を述べて軍議を誘導するほどだ。

 一方、又兵衛を主人公にした矢野隆『生きる故』は少し趣が違う。最初に又兵衛が出馬すべしと主張し、信繁の方が躊躇するのだ。淀の方が許さないだろうから、と。それを聞いた長宗我部盛親が「この戦、大将は女であるか」と大野修理を挑発し、美男子の毛利勝永が冷たく鼻で笑うなど、五人衆のキャラが立った実に印象的な場面である。

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