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東京都知事イロモノ説

小池vs.石原 ポピュリスト頂上決戦の本質

2017/03/24

genre : ニュース, 政治

note

 先日しみじみしてしまったのがこの記事だ。

「朴前大統領 公邸に犬9匹“置き去り” 動物保護団体非難 」(スポーツニッポン・3月14日)

 朴槿恵前大統領は天然記念物の珍島犬をひとつがいプレゼントされ「セロム(新た)」「ヒマン(希望)」と名付け公邸で飼っていた。今回罷免され、新たな思いも希望もなくなったので置いていったのかもしれないが、記事の本当の読みどころは次だ。

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《朴氏の親友、崔順実被告の国政介入事件発覚後、セロムとヒマンの名も崔被告の意見を聞いて決めたことが判明した。》

"親友"に犬の名前すら決めてもらっていたのだから、他は推して知るべし。

©共同通信社

 歴代の韓国大統領は任期を終えると一転して暗い晩年が待っている。死刑判決が出たり、自殺したり、国民に罵声を浴びたりマスコミにもみくちゃにされたりしてキツい晩年が待つ。新しい権力から糾弾されて転落が待っている。歴史に連続性がない。

「キツい晩年」「連続性がない」と書くと、韓国を上から目線で見てるようだが決してそうではない。だって、「東京都知事をめぐる風景」とゾッとするほど同じではないか。

ポピュリストがポピュリストを叩く「刺激」のショー

 ここ数代の東京のトップの連続性のなさ。いったん気に入らないとなればとことんマスコミに「もみくちゃにされる」。権力の座を降りたあとに暗い晩年が待っているのも韓国と同じ。

 小池百合子vs.石原慎太郎が大ウケする理由は豊洲移転の是非なんかではなく、ポピュリストがポピュリストを叩くという「刺激」の一点である。私も含めて多くの人は究極のショーを見物しているのである。

 つまり東京都知事とはイロモノなのだ。

百条委員会もショーだったのか ©共同通信社 

 ここ20年の都知事を思い出してほしい。青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一、小池百合子。みんなイロモノではないか。

 イロモノというのが失礼なら異端の人びと。猪瀬直樹を除き、前職は国会議員だったのも共通項。ここにヒントがある。

 共通するのは圧倒的な知名度があったことだ。大衆人気は抜群。そのせいだろうか、コツコツとした地味な仕事より派手な言動が好き。マスコミという拡声器を使って、世間と永田町の橋渡しをしてるつもりになる。客寄せパンダにはなるが決して中心にはいない人。実は本人もそれがわかっているからますます発信を強める。

鈴木俊一から青島幸男への都知事交代(1995年) ©原田達夫/文藝春秋

 そんなイロモノは永田町では異端でも本人さえ決断すれば「ある場所」では一気に強大な権力に近づける。それが、東京都知事なのである。

 党や派閥のしがらみは関係なく、一般人が選んでくれる選挙で勝ちさえすればいい。そうなるとイロモノは強い。選挙で圧勝する。

 国政では総理にはなれない永遠の関脇クラスが知名度を生かして横綱になる。

 そして次が重要だが、都民は最初はイロモノに熱狂するがそのうち飽きる。

 韓国の大統領にも負けない「連続性の無さ」「前任者叩き」が盛り上がる。最近は4年に1度の投票まで待てなくなってきた。カネがある東京は「新しい顔選び」が結果的に都民に対する最大の娯楽提供となっている。

 現在は「新イロモノ・小池百合子」が「旧イロモノ・慎太郎」を食おうとしている。