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連載クローズアップ

Cocco40歳のやり方「25歳くらいで死んでる予定だったのに(笑)」

クローズアップ

「今ここにくる時、迫りくるライブのセットリストを聞きながら移動してたんだけどさ、『愛うらら』という曲を聴いてたら、歌うとは愛されること、愛することだなと思った。私はこうやって歌ってきたんだなって。今回のアルバムで20年を振り返ってみたら、けっこうな量の歌とけっこうな量の思い出と、けっこうな量の愛があった(笑)」

 97年の衝撃のデビューから20年。Coccoの新譜『20周年リクエストベスト+レアトラックス』は、新鮮な驚きに満ちた3枚組だ。「カウントダウン」から昨年の『アダンバレエ』まで含むヒット曲が中心の2枚に加え、3枚目にはファン垂涎のレアトラックが多数収録されている。

「今回のベスト盤は、自分の集大成というよりはCoccoを聞いてきたみんなの集大成。ファン投票を募ったら、シングルのリード曲よりもカップリング曲のほうが幾つも上位に入っていて、発見がいっぱいあった。投票のダントツ1位はアルバム未収録の『手の鳴るほうへ』。どういうこと!? って。『強く儚い者たち』のような人気曲を聞きたいだろうと思ってたら、自分も忘れていたような曲が上がってきて。3枚目には『Heaven's hell』のような、故郷への愛が零れ落ちた曲を入れました」

 ディスク3には、いわばCoccoの空白期の葛藤がつぶさに見て取れる。2001年の絶頂期に突然の活動休止――その後、沖縄で「ゴミゼロ大作戦」を掲げて地元の中高生たちと大合唱で歌い上げた名曲「Heaven's hell」(03)にはひときわ胸をつかれる。

「そこに身をおけば、その土地の歌が生まれる。身をおかないとわからないこと。歌は結果だから、普通に生きるために食べて消化して出てきたものという感じ。この曲で吹奏楽の指揮をしてくれた先生は私の高校時代の恩師。もう亡くなってしまわれて……音の中でだけ会えるんです」

 2006年の復帰への胎動を示すかのような、尾崎豊や松田聖子のカバー曲には“孤高の歌姫”の遊び心が溢れる。

「松田聖子さんの『渚のバルコニー』のカバー、すごくいいでしょ(笑)。孤高の歌姫って思われてるからか、こういうトリビュート企画にもなかなか誘ってもらえなくて。でも単純に頼まれたら嬉しい、女ってそういうものでしょ?  尾崎豊さんの企画に参加したのは、もしCoccoが亡くなった後に私のディレクターがトリビュートを作りたいって誰かに頼みにいったら、引き受けてほしいと思ったから」

 昨年は、岩井俊二監督作『リップヴァンウィンクルの花嫁』で黒木華と共演し、役者としても大きな注目を浴びた。

「映画はとにかく、すごく楽しかった!  歌はどんなに辛くても誰もタオル投げてくれない。だから誰かにスタート、カットって言ってもらえることが嬉しくて。演じると細胞が全部生まれかわる感じがして、わきゃきゃきゃと何度でも蘇る感じ(笑)。お芝居なら何回だってくり返しできる。歌だとレコーディングの時とかテイクは多くても3回、だいたい2回しか歌わない。頭から最後まで歌ったら、そこから頭には戻れない。もう一度歌う力があったらさらにその先に進むしかできない」

 40歳という節目を今どう受け止めているのだろう。

「気づいたら生きのびていた。25歳くらいで死んでる予定だったのに(笑)、図らずも私は生き残るほうだった。もともと踊りで食べていきたかったのに、なぜか歌ではデビューできて、需要と供給が成立しているからやらなきゃという気持ちのほうが強かった。ずっと不安だったけど、振り返ってみたらこんなにも愛し、愛されていることが分かった。だからこれからはもう怖がらずに、楽しいことを選んでも赦される人生なんじゃないかなと。先日、古くからの友人が、笑ってるこっこが一番強いんだよ、と言ってくれた。私が楽しくて嬉しいのが一番、40代はそういうやり方をしてみようと思います」

1977年沖縄県那覇市生まれ。97年、シングル「カウントダウン」でメジャーデビュー。「強く儚い者たち」「Raining」「樹海の糸」などヒット曲多数。2016年、岩井俊二監督作『リップヴァンウィンクルの花嫁』に出演し、9thアルバム『アダンバレエ』のリリースとともに、大きな話題を呼んだ。

INFORMATION

『20周年リクエストベスト+レアトラックス』
通常盤 3900円+税 発売中

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