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池上 彰
2017/03/28

「池上流」の旅した国で見るポイントとは?

池上さんに聞いてみた。

Q 旅行で、その国のことを知るために見るところは?

 池上さんは世界の様々な国を訪れて取材をされていますが、その国のことを知るために、必ず訪れる場所や、観光する場所はありますか。ガイドブックを見て、観光名所を回る…という旅には驚きがなくて、退屈しています。池上さんが、訪れる国の政治情勢や、現地の人のことを知るために見ているポイントがありましたら教えてください。(20代・男・学生)

A 国の今後の発展を占うために、必ず見るところがあります。

 観光名所を巡る旅も、それなりに楽しいものですが、私は普通の人とちょっと違った観点から見ています。

 それは、開発途上国を訪れたとき、その国が将来発展するかどうかを人々の読書ぶりで確かめることです。

 ヨーロッパの古い街を歩いていると、こぢんまりとしたいい雰囲気の書店によく出合います。古書店も多いですね。カフェでひとり、読書にふけっている人の姿を見ると、その街の文化のレベルの高さを感じます。

 では、開発途上国はどうか。

 いまから17年前、ベトナム戦争の歴史を書くため、ベトナムに取材に行ったときのことです。テレビのロケではありませんよ。現代史の本を書くための取材。ひとりで各地を歩き回りました。

 夏の昼下がり、ホーチミン市の街を歩いていると、商店で店番をしている若者たちは、強い日射しを避け、日陰に隠れています。

 てっきり昼寝をしているのだろうと思っていたら、なんと読書に夢中になっているではありませんか。それも1軒だけではありません。多くの商店で、若者たちが読書にふけっていました。

 街には大きな書店もありました。店内をぶらついていたら、万引きしようとした若者が店員に取り押さえられ、ちょっとした騒ぎになりました。どんな本を万引きしようとしたのか。好奇心に駆られて覗いてみたら、英語の参考書でした。

 このとき私は、「ああ、ベトナムはこれから発展するぞ」と思ったのです。

 この若者は、英語を勉強したくても金がないので万引きに走ったのでしょう。こんなにも勉強している、勉強したがっている若者たちがいる。この国には未来がある。そう思ったのです。

 その後、ベトナムが急激に発展してきたのは、ご存じの通りです。

 この頃、中国の北京や上海の書店に入ると、学習参考書のコーナーに若者たちが群がっていました。「中国も発展するぞ」と思ったものです。

 その一方、東南アジアの某国の首都を訪ねたときのこと。いくら探しても書店が見つかりません。本を読んでいる人の姿を全く見かけませんでした。「この国は、ちょっと辛いぞ」と思いました。いまになっても、この国の発展の話は聞こえてきません。

 その国が今後発展するか、どうか。書店や読書ぶりから占うという方法があるのですよ。

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