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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2015/03/07

三国な戦士のテーゼ(3)
――そのとき劉備は

genre : エンタメ, 読書

  吉川英治・北方謙三・宮城谷昌光・陳舜臣の「三国志」を1巻だけ読み比べてみようという試みも今回が総仕上げ。吉川版を基本テキストに、ハードボイルドな北方、正史ベースの宮城谷、解説が親切な陳という特色が出たところで、同じ場面の劉備を比べてみるよ。

 注目したのは、黄巾の乱の鎮圧で活躍した劉備が安熹県の県尉(警察署長みたいなもんですね)となったときのエピソード。督郵(役人)が中央から視察に来て、露骨に賄賂を要求したわけだ。

 吉川英治『三国志(一)』(吉川英治歴史時代文庫)では劉備の側近・張飛がこれに怒った。強引に押し入り、「天に代わって、汝を懲らしめてやるからそう思え」とセーラームーンのようなことを言って督郵を柳の木に縛りつけ、柳の枝で鞭打ったからさあタイヘン。劉備は慌てて止めに入る。でもこんな官吏のもとでは何をやってもムダだと関羽に諭され、県尉の印綬を督郵に返す――つまり県尉を辞した。

「『この印綬は卿に託しておく。我れ今、官を捨てて去る。中央へよろしくこの趣を取り次ぎたまえ』/そして張飛、関羽のふたりをかえりみて、/「さ。行こう」/と、風の如くそこを去った。」

 かっけー! このくだりは、血の気の多い張飛、知恵者の関羽、人格者の劉備という三人のキャラが立った象徴的な場面なのだ。さて、吉川版は小説の『三国志演義』が下敷きだが、正史ではどうなってるか、宮城谷昌光『三国志 第三巻』(文春文庫)を紐解いてみよう。――おや、どうやらこの督郵と劉備は前からの知り合いだったらしいぞ。

三国志〈第1巻〉(文春文庫) 文庫

宮城谷 昌光 (著)

文藝春秋
2008年10月10日発売

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三国志〈第2巻〉 (文春文庫)

宮城谷 昌光(著)

文藝春秋
2008年10月10日 発売

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三国志〈第3巻〉(文春文庫) 文庫

宮城谷 昌光 (著)

文藝春秋
2008年10月10日発売

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