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森岡 英樹
2017/04/01

東芝メモリ事業、経産省主導に明日はあるのか

訪米でも東芝問題を協議した世耕氏 ©文藝春秋

「“東芝メモリ”は、経産省に軍配が挙がるんじゃないですか」

 メガバンク幹部がこう漏らすのは、東芝の半導体部門の売却先だ。入札には米ウェスタンデジタルはじめ、台湾の鴻海精密工業など、10社程度が興味を示している。当初、有力候補とされたのは、シャープを買収した鴻海だった。

「鴻海の郭台銘会長には、ソフトバンクの孫正義氏という有力スポンサーもついている」(同前)

 だが、世耕弘成経産相が、海外勢の買収について「国の安全などの観点から厳格な審査を実施する」と明言したことから、様相は一変。

「経産省は、鴻海は中国に大規模な生産工場を持っており、技術が流出するとして、買収を認めない方針です」(経産省関係者)

 そこで、急浮上してきたのが日本政策投資銀行や官民ファンドの産業革新機構といった政府系のスポンサーだ。

「背景には、外資にマジョリティを取られたくない経産省の意向がある。東芝の半導体事業は成長産業で、国防とも密接に関連して人材が流出しては困るという大義名分の下、鴻海排除の姿勢です」(同前)

 実はこの対決は、シャープ買収の時と同じ構図だ。当時、経産省は産業革新機構にシャープを買収させ、同機構が筆頭株主のジャパンディスプレイと統合する“日の丸液晶”構想を描いていた。

「ところが、金額面で産業革新機構を上回った鴻海に敗れた。鴻海を推したメインバンクのみずほは、経産省から『国賊』呼ばわりされたほどです」(前出・メガバンク幹部)

 その雪辱戦となる東芝メモリ争奪戦は、

「外為法で厳格な事前審査を課すことができ、政府の意向がダイレクトに反映される。政投銀は特別目的会社を設立し、米投資ファンドと組む構想も練っています」(同前)

 だが、経産省主導で作られたジャパンディスプレイは資金繰りが悪化し、750億円の金融支援を余儀なくされ、3月には経営陣交代に追い込まれている。

 一方のシャープは、17年3月期には黒字転換する見込みで、ボーナスの労使交渉も満額回答となった。

 経産省が民間企業の経営に口出しして、うまくいった例はないのだが……。

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