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振り込め詐欺の「受け子」で逮捕。埼玉の名門校高野球部員“悪魔の秋”

 部活人生を引退した後の喪失感から魔が差したのか。今月、警視庁が振り込め詐欺事件で被害者から現金を受け取った「受け子」として、高校3年の男子生徒(18)ら少年3人を逮捕した。野球部を引退したばかりだったという。

 警視庁担当記者が語る。

「逮捕されたのは、さいたま市にある私立高校の生徒ら。この高校は過去に甲子園に出場経験もある野球名門校です。男子生徒らは昨年9~10月、奈良県の70代女性に対し、通信販売の解約手続きが必要で、『解約しないと料金が発生する。警察沙汰になる』などと虚偽の説明をして現金300万円を欺し取った。少年は『部活が終わり時間ができたので遊ぶ金が欲しかった』と供述しており、野球漬けの生活が終わり、一度に数万円が報酬として手に入る『バイト』に目がくらんだことが主な犯行動機のようです」

 高校野球のシーズンは、夏の大会をもって終わるのが通例。3年生は進級直前の3月に春の選抜高校野球を終え、都道府県の予選を経て8月の甲子園で集大成を迎える。といっても、大半は夏の地方大会で負けた時点で引退だ。

甲子園に辿り着くのは一握り ©共同通信社

「負けた瞬間はみんな涙を流して虚脱感におそわれるけど、その後は遊べる解放感でいっぱいになる」(高校野球経験者)

 野球を引退するのは「大学受験や就職などに備えるため」というのが建前だが、全員坊主頭だった球児が髪を伸ばし始めるのも、秋のこの頃。悪の道に傾く球児も少なくない。東北高等学校で甲子園に4度出場し、大リーグに渡って日本を代表する大投手となったダルビッシュ有(30)が、高校3年の時、最後の甲子園大会を終えた秋に、喫煙している写真を報道されたことは、高校野球の黒歴史の1つだ。

 捜査関係者が釘を刺す。

「逮捕された男子生徒の1人は単なる受け子ではなく、野球部内で受け子を勧誘するリクルーター役だった。受け子らには、怪しまれないように着るスーツなども貸していたとみられている。もう1人は受け子に現金の受け取り場所などを指示するリーダー格。単なる出来心の域を完全に脱している」

 警察庁のまとめでは2015年、特殊詐欺事件で検挙された少年は394人で、全体の2割を占める。部活に打ち込む純粋培養の少年たちは、特に注意が必要だろう。