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連載歴史・時代小説の歩き方

豆は夜更け過ぎに餅へと変わるだろう――旧暦新暦大混乱

2014/12/20

genre : エンタメ, 読書

 旧暦だと1年は立春から始まる――と思っていた時代が私にもありました。この勘違いしてる人、案外多いらしい。それが間違いだと知ったのは20代も後半の頃。平岩弓枝『鬼の面 御宿かわせみ13』(文春文庫)の表題作を読んだときだ。こんな一文から始まる。

「その年の節分は、暮の二十五日であった」

 はい? 節分が、暮の25日? 平岩さん、何言ってんの? 立春=元日だと思ってた私大混乱。でもって「鬼の面」はこう続く。

「旧暦の時代では、年の内に立春が来るのは珍しいことではなく、むしろ、江戸の人間の多くは、年の暮に節分を迎え、厄を落してから元旦を迎えるのが気持のよいことだと考えているようなところもあった。/大川端の小さな旅宿『かわせみ』でも、門口に柊に鰯の頭を刺した厄除けを打ちつけ、一升枡に大豆を盛ったのを、番頭の嘉助が神棚に供えているところへ、東吾がひょっこり顔を出した。」

 東吾は支度が済んでから来ないように。手伝いなさい。って、そんなことより「年の内に立春が来るのは珍しいことではなく」だと? いや待て、確かに立春が元日だと、毎年大晦日に豆まきすることになる。豆食べて蕎麦食べて夜があけたら餅である。鰯の頭が門松と一緒に飾られてしまう。なるほど、変だ。てんで調べてみたら、そもそも私は旧暦の仕組みを誤解していた。太陰暦は月の動きが元だから、新月の日が月の始まり、1日になる。でもってこれは立春とは一致しないのだそうだ。

鬼の面 [新装版] 御宿かわせみ(13) (文春文庫)

平岩 弓枝(著)

文藝春秋
2005年7月8日 発売

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 ざっくり言えば「立春の次の節気である雨水を含む月が1月」らしい。だから立春から雨水までの間に新月があれば立春は前年、なければ立春は新年になる。30年に一度くらい、ホントに立春当日が新月で元日になる年があって、その日は「朔旦立春」と呼ばれてとても縁起がいいそうな。盆と正月ならぬ立春と正月が一緒に来て、大晦日に豆まいて蕎麦食べて翌日は餅だ。

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