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フジモンが考える「一発芸」の運命と「パクリ芸」の使命

“テレビっ子”藤本敏史が語るテレビのこと #3

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パクリ芸は本人がやってるより上くらいのテンションでやってます

――パクりたくなるようなギャグの基準というか、引っかかる部分はどこなんですか。

藤本 一撃必殺なところが多いですね。長ったらしいのはダメですね。やっぱり日常会話の中で使えるやつが好きです。ですよ。の「あーい、とぅいまてぇ~ん!」とか。ほんとに使いやすいですね。(響の)「どうもすいません!」とか。僕は、誰もがやらなくなった時に出す。それは芸人さんだけではなくて、自分の中でブームがあるんです。例えばいま押してるのが五郎丸ポーズ(笑)。もう誰もやらへん。「お・も・て・な・し」とかもね。あとマニアックなところでいうと、元冬季五輪のスノーボード代表の國母(和宏)選手の「反省してまーす」みたいな。これあんまり伝わらないんですけど(笑)。それを探す作業はしてます。あ、これあったなというような。

 

――國母くんはけっこう懐かしい域ですもんね。

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藤本 そうですね。

――でもなんか、分かってくれる人が分かってるという。

藤本 「誰もやってへんがな!」とツッコまれるのが想像できるんですよね。もう楽です。「藤本さんです」と言われて五郎丸ポーズやったら、「誰もやってへんがな」というので掴める。皆がやってる時にやってしまうと、それは普通なので。だから廃り待ちみたいな(笑)。

――なるほど(笑)。真似する時に気を付けてることとかって、あるんですか。

藤本 それはもう単純に、ちゃんとクオリティを下げずに、本人がやってるギャグの上くらいのテンションでやってます。

 

――テンションを上げて。

藤本 パクらせていただいてるというのがあるので、それは適当にやるのだけはやめておこうと。ただウケるんでね、こっちもついつい熱が入るという。いまは一発芸で大ブレイクした芸人の「その次流行らせようとしたギャグ」にハマってます。例えば、エド・はるみの「グー!」とか、(レイザーラモン)HGの「フォー!」とかの後に、二匹目のドジョウを狙って、その次に流行らそうとしたギャグがあるんですよ。でもそれは、正直全然流行ってないんですよね。今それを世間にお見せするのが、僕の使命だと思ってます(笑)。二匹目のドジョウを狙って失敗したギャグを成仏させてあげたい。HGでいったら、腰を上げて「ワッ、ワワワッ、ワッショーィ!」というのがあるんですよ。誰も知らんでしょ(笑)。エド・はるみでいったら「ありがとうございまスーハスースー、スーハスーハスー!」というのがあるんですけど、これを僕が流行らせてあげたいなと(笑)。

――成仏のために。

藤本 まあ、誰も知らないんで、まったくウケないですけどね(笑)。いま、その作業をしてます。

――使命感が強いんですね(笑)。

藤本 これも使命。芸人側から「藤本さん、これ流行らせてください」と言われるのもあるんですけどね。それでほんまに一発屋の奴がまた何かで呼ばれたらいいなと、ちょっと思うんです。それもこれもなんかね、お笑い界を盛り上げるためにということなんですかね。勝手な使命感ばっかりですよ、誰からも頼まれてないのに(笑)。とどのつまりは、テレビを元気にしたいというのがホントにあるんですよね。

 

ふじもと・としふみ/1970年大阪府寝屋川市生まれ。NSC大阪校8期生。89年、原西孝幸と「FUJIWARA」結成。

写真=榎本麻美/文藝春秋

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