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アヒル口、涙袋、みんなキライ。僕の美的感覚とズレている──高須克弥院長インタビュー

高須院長に美容整形のことをマジメに聞いてみた。<第1回>

2017/04/16
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 漫画家・西原理恵子さんとの交際やツイッターでの歯に衣着せぬ直言、ピコ太郎とのCM共演など、なにかと話題の高須克弥院長だが、本業は美容外科医だ。そして「プチ整形」という言葉の生みの親でもある。この2月も名古屋のクリニックで死亡事故が起こるなど、美容外科ではトラブルや医療事故の報道も少なくない。どうすれば後悔しない美容整形が受けられるのか、この道40年以上の「かっちゃん」に「週刊文春」や「文春オンライン」で医療記事を執筆しているジャーナリスト、鳥集(とりだまり)徹さんがマジメに話を聞いてきた。

今流行りの「アヒル口に涙袋」なんて、銃で撃ってやりたい

鳥集 本業以外の話題でメディアに引っ張りだこですが、今回は、本業の話を真面目に聞いてみようと思っています。美容外科業界には様々な問題点があります。ぜひ率直なご意見をお聞かせください。

高須 みんな、僕のこと「医者もできるんかい」って驚くかもね(笑)。

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鳥集 ところで、今日も手術なさったんですか? 以前は一日で包茎手術を300件もやったそうですが。

高須 取材や撮影があったのでいつもより少ないけど、診察が35件でオペが15件。クリニック全体だとオペは150件以上だね。昔はそれを一人でやってたの。包茎手術もね。そのときは助手がいて、縫う係と麻酔係がいたから、その数をこなせたんだよね。

鳥集 現在、高須院長は72歳だそうですね。外科医なら、どの分野の人でも「いつ引退するか」を考えているはずですが、高須院長はいかがですか?

現在、72歳。「今のところ、僕が一番上手いよ」 ©三宅史郎/文藝春秋

高須 自分がダメだと思ったら引退しなくちゃいけないね。日野原先生(聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏)みたいに105歳になっても回診してる人もいるけど、そこまでいったら手術はしちゃいけない。でも、やれるならいくつでもやっていいんですよ。人間国宝だって舞台で踊っちゃうもんね。それに今のところ、僕が一番上手いしね。

鳥集 一番上手いということは、高須院長が難しい手術を担当しているんですか?

高須 気が向いたらね(笑)。基本的に若い子は診たくないの。僕ね、今の若い子が好きな整形、大キライ! アヒル口とか涙袋とか、漫画みたいに大きな目とか、みんなキライ。アヒル口で涙袋があったらね、僕、その子を銃で撃ってやりたいくらい(笑)。だから若い子は、息子とか若い医者にまわしてるの。

時代によって美的感覚は変わるんですよ

鳥集 若い子がお嫌いなんですか?

高須 当人たちはそれを美しいと思いこんでいるからね。昔はやたらエクボを作りたい人がたくさん来てたし、八重歯を作りたいという人もいた。時代によって美的感覚は変わるんですよ。

 美容整形って、二つ柱があるんです。ひとつは「若さ」、もうひとつは「美貌」。若さは普遍的なもの。誰が見ても若いか年食ってるかって、すぐわかるじゃない。でも美貌となると、何が美しいと感じるかはその人の趣味や流行によって違ってくる。一重まぶたや、切れ長の目がいいという時代もあったんです。ミルク飲み人形みたいな目が流行ったときもあったしね。

 基本的にバランスが整った顔が美人なんです。しかし、今はアヒル口とか涙袋とか、一点豪華主義でしょ。だから、若い子はキライ! 僕の美の基準や美的感覚とズレてるもの。でも“お金持ちおばさん”とは心がひとつですよ(笑)。医者と患者の心がひとつになってこそいい作品が作れるの。

鳥集 “お金持ちおばさん”と高須院長は気が合ってるということですか?

高須 これはもう、ピッタリ合ってるんですよ! 僕は吉永小百合と同い年ですから、その世代の人たちは僕が美しいと思っているものを美しいと感じてくれる。日本画家に「油絵描いてくれよ」って言っても断られるでしょ。パトロンと芸術家の心がひとつになって初めていい作品ができる。美容整形もそれと同じことなの。

鳥集 世代によって美の基準は違いますが、国によっても基準が違いますよね? お隣の韓国は整形大国と言われています。

高須 韓国の美の基準は僕が捏造したものですから(笑)。金大中大統領の頃まで、韓国で売られていた美容整形の本は僕が書いたものしかなかったんです。だから韓国の人は「美容整形といえば高須クリニック」って刷り込まれちゃった。韓国のお金持ちや映画スターもたくさんうちに来て整形していきましたよ。韓国の美容外科の学会(大韓美容外科学会)の初代メンバーは、僕の弟子ばかり。だから、よく韓国の美人コンテスト入賞者はみんな同じ顔をしてるって言われるけど、あれはもともと僕のオリジナルなの。

みんな勘違いしてるけど、丁寧に縫う人が上手な医者じゃないの

鳥集 高須院長は「美の基準にあった手術をしたい」とお話しされましたが、そうは言ってもテクニックも大切ではないでしょうか?

高須 あのね、テクニックは大事じゃないの。誰でも訓練すればテクニックは向上するから。でもセンスが悪いやつは救いようがない。洋服もそうだけど、デザイナーが90%。いくらいいお針子連れてきてもデザインがよくなかったらイモなんです。

 みんな勘違いしてるんだけど、丁寧に縫う人が上手な人じゃないの。ハサミ入れたり、縫ったりなんてのは、熟練の職人ならみな同じレベル。そうじゃなくて、例えば「頭でっかち胴長短足」という人がいたとして、足を長くしたほうがいいのか、頭を小さくしたほうがいいのか、それを決定できる医者が重要なの。

 医者の使命って、患者の病気を治してあげることだよね。でも患者に「胃の具合が悪いから胃の薬くれ」と言われて、そのまま胃薬を出すような医者はヤブ医者ですよ。なぜ胃の具合が悪いのか、もしかしたら心筋梗塞かもしれないと原因を探る必要があるんです。「お前は胃が悪いって言っているけど、そうじゃなくて肝臓が悪いんだ」ってちゃんと言ってやれる医者じゃないとダメなの。

鳥集 美容整形で言えば、「鼻が低いのがいやだ」と思っていても、本当はそうじゃないってことですか?

高須 鼻が低いんじゃなくて、あごとおでこがやたらと出てるのかもしれない。相撲取りには多いよ。だから鼻が低く見える。僕だってね、頭でっかちで胴が長いんじゃないのよ。足が短いだけ(笑)。ピコ太郎と一緒にいても座ってるときの高さは同じですもん。立ち上がって踊りだすと違うけど(笑)。それを誰かが教えてやらなくちゃ。

鳥集 つまり、上手い美容外科医というのは、「メスさばきがいい」とか「縫合がうまい」とかではなくて、センスがいいデザイナーということなんですね。

高須 手術が上手いかどうかは枝葉の問題。美的センスが一番大事なんだけど、この世界は肝心なそこがイマイチな人が多いんだよね。