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卒論テーマは“原発” 東電新会長・川村氏は改革を断行できるか

経団連より東電!? ©文藝春秋

「川村さんも、国と経団連に、外堀を埋められたようですよ」(電力業界関係者)

 東京電力ホールディングスのトップ人事が経済界を驚かせている。会長には日立製作所名誉会長の川村隆氏(77)を起用、社長には53歳の小早川智明氏が抜擢される。

 川村氏は、2008年度に計上した製造業では史上最悪の7800億円の最終赤字から、日立を立て直した辣腕経営者として知られる。ライバルの東芝が、解体の危機に瀕していることもあって、その手腕は再び評価されている。

 だが、東電といえば、福島第一原発事故処理にかかる賠償や廃炉の費用が21.5兆円とされ、経営改善は困難を極める。

 しかも、川村氏は2014年に経団連会長への打診を固辞するなど、経済団体や国の要職からは距離を置いてきた。

 それがなぜ、東電という火中の栗を拾ったのか。

「経産省など政府が、川村さんに絞って強く働きかけたのです」(同前)

 12年に実質国有化された東電では、2代連続で、政府主導で会長人事が決まってきた。川村氏も昨年、経産省が設置した東電改革の委員会に名を連ね、その改革案に、政府が抱きついたのが真相だ。

 特に、東電は以前から、経産省側と東電守旧派が競り合いを続けており、政府側は「京セラ創業者の稲盛和夫氏並みの実績」(経産省関係者)を誇る川村氏の起用で、改革を断行したいとの思いがにじむ。1月には世耕弘成経産相が直接打診したという。

 川村氏は、77歳なだけに熟慮を重ねたようだが、最終的に自ら受諾を決めた。というのも、川村氏は日立では火力発電がメインだったが、大学の卒論で原発をテーマにするなど思い入れは強く、「自分で原発にケジメをつけたいと思っているようだ」(日立関係者)。

 一方の新社長に就く小早川氏はダークホース。東工大出身で電力小売りの子会社社長を務め、昨年の電力自由化で、「原発再稼動を前提にしない戦略」で改革手腕を発揮。東電主流の企画部門ではなく営業畑だが、人事のカギを握る経産省幹部からの評価を勝ち取り、社長の座を射止めた。

 東電、東芝と原発銘柄で経営問題が続く中、新体制が課題の「原発再編」を断行できるかが試されている。

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