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防腐措置と死化粧 北朝鮮に引き渡された金正男の遺体はどうなるのか?

正男氏の遺体を載せたとみられる車(クアラルンプール市内) ©共同通信社

「遺体の搬出は極秘裏に行なわれました。病院の死体安置所に横づけされたバンが走り去り、警察による厳重な警備態勢が解かれたことで、我々は初めて金正男氏の遺体が運び去られたことを知りました」(現地紙記者)

 白昼の暗殺劇から6週間余りが過ぎた3月30日、金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏(享年45)の遺体が北朝鮮に引き渡された。

 米韓は事件発生直後から、凶行は北朝鮮の暗殺部隊によるものと断定したが、北朝鮮は被害者が金正男氏であること自体を否定。遺体はパスポートの名義である“キム・チョル”氏のものだとして、マレーシア政府に遺体の引き渡しを求めてきた。

「マレーシア政府は、事件の現場にマレーシアが選ばれたことに激怒し、警察に徹底捜査を指示。マレーシア警察は『北朝鮮大使館内に3名の容疑者が匿われている』として北朝鮮と徹底対決、遺族以外への遺体の引き渡しも拒んできました」(現地記者)

 それがなぜ一転、引き渡しとなったのか。

「最終的に北朝鮮の“人質外交”に屈したのです」(同前)

 北朝鮮は遺体の引き渡しに応じないマレーシア政府を批判し、在平壌マレーシア大使館職員やその家族に対して出国禁止措置を取っていた。

「膠着状態が長引くにつれて、マレーシア国内で大使館職員の帰国を求める声が高まったため、やむなく遺体の引き渡しに応じた。ナジブ首相は、遺族から『遺体を北朝鮮側に引き渡して欲しい』という主旨の手紙が届いたと明かしました」(同前)

 北朝鮮に引き渡された正男氏の遺体はどうなるのか。

「正男氏の遺体には2度にわたり防腐措置がとられ、北朝鮮関係者に引き渡される直前には死化粧まで施されたそうです。“北朝鮮は遺体を見せしめにするのでは”とも囁かれていますが、そもそも北朝鮮の国民が存在すら知らされていないという正男氏の遺体がどう処理されるのか、想像がつきません」(同前)

 一方で、正男氏の遺体と共に、北朝鮮大使館内に匿われていたとされる3人の容疑者も北朝鮮に帰国してしまった。

「警察は“政府にハシゴを外された”と不満を隠せませんが、後の祭りです」(同前)

 世界を震撼させた暗殺劇は「迷宮入り」が濃厚だ。