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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/04/12

スキャンダルもマイナスにならない GACKTの新曲MVに見えた“覚悟”

罪の継承~ORIGINAL SIN~(GACKT)/CALLING(VAMPS)

絵=安斎肇

 我国のロック史などを紐解いてみると、バンドといえばほぼビジュアル系なんて時代も結構長くあったのである。

 今やそういったお耽美なシーン(笑)はどうなっているのか。詳しくはわからないが、強力な新人の噂も聞かないし、いっときほどの輝きはもう失われてしまったかのようにも思われる。

 そんな――jpopの趨勢を眺むれば――先細りと映らなくもない“全ビジュアル系界”にあって、最近何かと名前が出るというか、ひとり気を吐いているというか、この男だけはむしろ巷での注目の度合いを高めているといって決して過言でないのが、GACKTだ。

 ただ、我々がよく耳にする彼の話題はといえば、本業にまつわるものの案外少ないことも、まぁ事実であろう。

 おりしも新曲が発表されたとのニュースにこれ幸い、あくまでも“表芸に限って”現在のGACKTとはどのような意義を持つものなのか。正直好奇心も手伝って取り寄せてしまった『罪の継承』である。ビジュアル系ということで、ある意味絵は音より大切だ。早速映像付き音源でチェックを始めたのだったが……。

 この際CGか本物かなんてェこたァどうでもいい。こういっちゃなんだがわたくし、インセクト、ワーム問わずとにかくもう虫と名のつくもの全てが大の苦手なのだ。それがのっけからこの動画ときた日にゃあーた、なかでもことに無気味なみてくれの虫さんだけを選りすぐったとしか思えぬ。実におぞましきキャスティングだったのである。

 小耳に挟んだ情報では、限界を超えたスプラッタ趣味に「いくらなんでも」の声が上がり、視聴に年齢制限を設けたとか……。俺にとっちゃハッキリいって血糊なんかより虫だよ! 怖いのは。

罪の継承~ORIGINAL SIN~/GACKT(アルテメイト)48枚目のシングル。TVアニメ『TRICKSTER-江戸川乱歩「少年探偵団」より-』ED。

 しかし。なるほどこれはまさしく如何にもGACKT好みの“光景”ではある。うーむ。

 一旦そう捉えると、たしかにこの人のやることなすことには“揺るぎなき一貫性”が保持されていることにも気づかされる。

 美学? はたまた哲学? 呼び方はともかく、一連のスキャンダラスなゴシップも、GACKTにかかっては決してマイナス要因とはならず、どころか時として勲章にさえ思えてしまうのも、何より健全をモットーとするjpop界にて、今回のような相当に猟奇的とも思える視覚が許されるのも、理由の根底にあるものは変わらないだろう。すなわちその揺るぎなさの前には、いわゆる世間の弾劾も結局歯が立たないという訳である。

 GACKTの“一貫性”は意訳すれば“覚悟”ではないか? ただ、それが一体何の覚悟なのかはよくわからないのだが。

CALLING/VAMPS(ユニバーサル)L'Arc-en-Cielのhydeと、Oblivion Dustのギター・K.A.Zが2008年に結成。12枚目のシングル。

 この人の魅力とはとどのつまり、未だ誰にも正体をつかませていないところなのかも。

 あ。音ですか? 凄みで少しビジュアルに負けてました。

 VAMPS。

 悪くはない。が、ここにしかない新しさってあるのかね。もうロックにそれを望んじゃダメな時代なのよねきっと。

今週のスランプ「安倍アキエ夫人の最近のニュースを見ていてさ、最初のうちは可哀そうだなぁと思ってたけど、色々情報入ってくると、彼女はいくらなんでも無用心というか、政治家の妻っつう立場に無自覚すぎるよね。あきれてしまうぐらい」と近田春夫氏。「逆に安倍アキレちゃん! というキャラにしてあげたほうが、かえって揉めないんじゃないの」