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星野 博美
2017/04/13

「森友学園問題」を掘り下げた、地元市議の努力を忘れてはいけない

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一推しニュース

大阪の学校法人への国有地払い下げ問題・第二弾~籠池理事長の説明を検証する〉TBSラジオ 「荻上チキ・セッション22」2月22日放送

 春らしい日差しが嬉しいある日の午後、運動に出かけると、更衣室のカーテンの向こうからおばさまたちの会話が聞こえてきた。

「最近ニュースが面白くて、ワイドショーばっかり見てるわ」

「アベシュショー、ガンバレでしょ」

 一般大衆がコンテンツとして楽しんでいる森友学園問題。本原稿を執筆している段階では籠池理事長の国会での証人喚問が決まり、どんな証言が飛びだすのか、各方面が戦々恐々としている。日々情報が更新されるので、明日どんな局面を迎えているかもわからない。

 もともと私がこの問題に関心を抱いたのは、ジャーナリスト菅野完(たもつ)氏の『日本会議の研究』でこの学園に触れた件(くだり)があったからだった。安倍首相や稲田防衛大臣を始め、過半数の閣僚が関わる「日本会議」。学園で行われる教育勅語の斉唱や軍国主義的教育、そして中国や朝鮮半島出身の人に対するあからさまな敵意。いまや時の人となった菅野氏だが、日本会議の存在にかねてから警鐘を鳴らしてきた氏にしてみれば、これは起こるべくして起きた問題で、「何をいまさら驚いている?」というのが正直な実感であろう。

 私を含め、大衆だけが知らなかった。いや、そうではない。様々な場所でじわじわと右傾化が進んでいることを知りながら、気づかぬふりをしてきたのだ。そして今も、刺激的だから楽しみ、飽きた時には捨てる。

 確かに森友学園問題はキャラの際立つ役者が揃っていて、ワイドショーには恰好の題材といえる。しかしそうなればなるほど問題の本質がぼやけ、俯瞰できなくなるのは危険だ。原点に戻りたい。問題にいち早く気づいたのは、瑞穂の國記念小學院の建設が進む豊中市の木村真市議だった。

 TBSラジオ「荻上チキ・セッション22」に電話出演した木村市議は、この問題がこれほど大きくなったことに困惑しながらも、訥々と関わりを話す。問題となった土地は、阪神大震災後に仮設住宅が建てられた場所。豊中市が公園利用のため購入を試みるが近畿財務局に高額を提示されて諦め、東半分を十四億で購入した土地だった。残る西半分に囲いができ、小学校の建設が始まった。フェンスに貼られた生徒募集のポスターに教育勅語が書いてある。は? 学園のHPを見ると、名誉校長が首相の妻・昭恵夫人で、理事長は日本会議と関わりの深い籠池という人である。は? 何かが臭うと直感した木村市議は調査を始める。豊中市に高額をふっかけた近畿財務局が某所と賃貸契約を結び、賃貸先も金額も黒塗りの文書を提示される。は? さらに売買契約書の公開請求を出したところ、再び黒塗り。これは絶対に何かがおかしい。そして情報公開請求に対し、不開示とした決定に対して大阪地裁に提訴したのがそもそもの発端だった。

衆院予算委の証人喚問で、安倍昭恵首相夫人の担当職員から送られてきたファクスを読み上げる籠池泰典氏 ©共同通信社

「何か一つ明らかになると、また別の謎が出てくるんです」

 地元で暮らす市議が市井の感覚に基づき、一つ一つ疑問を掘り下げていったところ、思いもよらぬ巨大な物語にぶち当たったという印象を抱いた。

 地道に掘り続けてきた木村市議や菅野氏の存在まで消費してはならない。コネの濫用、口利き、忖度、トカゲの尻尾切り。自浄作用を失った我々の社会が、この騒動には凝縮されている。この問題に悪の香りを感じる人には、自分が日常で「忖度」していないか、長い物に巻かれていないかを考えてほしいと思う。笑って捨てるだけでは、あちら側の人間と同じ。悪い奴はいつも、ただ笑っている。