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連載ことばのおもちゃ缶

究極の言葉遊びは「短歌」(1)“穴埋め川柳”と“短歌ゲーム”

2016/01/10

genre : エンタメ, 読書

 クロスワードパズル作りのいちばん面白いところは、「いくつかの文字が固定された状態で、決まった文字数の言葉を考え出さなければならない」という状況が途中でどうしても登場してくることにある。だからクロスワードパズル作りの醍醐味は、ほとんどこういう「虫食いクイズ」に置き換えることが出来る。

問題 次の□を埋めて言葉を作りなさい。

1問目 あ□□か□
2問目 □□ん□□ん□
3問目 さ□□さ□□さ

 1問目はだいたい誰でも「アルミ缶」を思い付くと思う。他にも「空き時間」とか「アホばかり」とかも考えられる。2問目は「(□□ん)(□□ん)□」という分け方で考えることに囚われてしまうと行き詰まる。実は「(□□ん□)(□ん□)」という分け方なのだ。「オレンジレンジ」があるじゃないか。3問目は面食らうかもしれないが、「サマンサタバサ」である。答えを言ってしまうとあっけないものだ。私の短歌の先輩である佐々木あららが、この「サマンサタバサ」の文字の構成に着目して「サマンサタバサ語」という言葉遊びを発案している。「1文字目、4文字目、7文字目に同じ文字が入る全7文字の言葉はあるか?」という問題である。発案者である佐々木あらら自身は、「加曽利貝塚」「アロンアルファ」「片岡飛鳥」「左膝の日」「すぐ忘れます」などを考案していた。さすがである。私が思い付いたのは「治せないかな」「生き甲斐がない」「無垢なムスリム」など。

 この「虫食いクイズ」は、正解が存在しないので正確にいえばクイズではない。「サマンサタバサ」を思い付けなくたって、「猿のサルサさ」でも「桜咲くのさ」でも「さだまさしミサ」でも別に間違いではない。ちゃんと意味が通じていればOKである。判断基準は面白いかどうか、それだけだ。これはクイズというよりも、共通のフォーマットのもとに一定のルールに沿って回答を提示してゆくゲームだといえる。

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 この遊びの最大のポイントは、文字数が有限であること。全体の総量があらかじめ決まっているので、引き延ばすことはルール上許されない。定量化されているということは、考えるのに大して時間がかからないということでもある。だからハードルが低く、誰でも挑戦できる。

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