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【日本ハム】チームが抱える「大谷翔平リスク」はスカイツリーのようにそびえ立っている

文春野球コラム ペナントレース2017

誤算続きで問われる栗山監督の手腕

 3カード消化して2勝7敗の最下位(4月10日現在)、かつ故障者続出のファイターズである。大谷翔平が左もも裏の肉離れで戦線離脱した上、インフルエンザ発症で完全にダウン。また不調をかこっていた中田翔は鼠径部の痛み(のちに「右内転筋筋挫傷」と診断がつく)、レアードが左上腕部の死球でそれぞれ途中交代、9日オリックス戦の後半は大駒が抜けて、まるでオープン戦に逆戻りしたようなラインアップだった。

 僕が前回のコラムで書いた「開幕戦はチームの施政方針演説である」というアイデアは、ことファイターズに関してはいきなり破たんしたと言っていい。前回書いたのは大意「開幕戦は143分の1ではあるけれど、勝敗はともかく、今シーズン、うちのチームはこのメンバー、この戦い方でやっていきますよという姿勢を示すものだ」という内容だった。それがいきなり大谷、中田抜きのチーム編成になった。これは栗山英樹監督も大誤算だろう。これまで経験したことのない局面でのマネジメント手腕が問われることになる。

 僕は栗山さんがコーチ経験を一切経ずに、解説者からいきなりファイターズの監督に就任したとき、「ガマンがきく監督さんだろうか」と心配したのだ。それは全くの杞憂だった。栗山さんの監督としての特徴は一に独創性、二にガマンがきくことだ。就任早々、結果の出なかった中田を4番で使い続けて、本物の4番打者にしてしまった。同じくぜんぜん打てなかった助っ人レアードを使い続けて、ホームラン王を獲るまでにした。こうと決めたら相当に頑固なのだ。コメントは「オレが悪い」「自分の責任」の一点張り。

 だから、開幕から打撃不振に陥り、守ってもエラー連発だった中田、レアードをどう扱っていくのか注目していたのだ。「オレが悪い」「自分の責任」でかばい切り、信じて待ち続けるのか。それとも好調の新鋭、横尾俊建、石井一成らをうまくハメ込みながら、休養を取らせる考え方なのか。まぁ、レアードは戦線離脱せずに済みそうだから、使い続けるかやりくりするかは見ていきたいと思う。一応、僕の考えを言うならレアードは休養→調整だ。打てない以上に、守備のミスは「ディフェンス野球=失点を少なくして、競り勝つ」、ファイターズの野球スタイルの根幹を揺るがす。

左太もも裏の肉離れで戦線離脱中の大谷翔平 ©文藝春秋

チームが常に抱えている「大谷翔平リスク」

 今回はチームの抱える「大谷翔平リスク」についてあらためて考えさせられた。最初に断っておくが、僕はもちろん球界のスーパースター、大谷翔平の大ファンだ。デビュー以来、彼のプレーに夢中だし、今年のWBC不出場は落胆しすぎて、つい晩ごはんのとき「あーあ」と言ってしまって夫婦ゲンカになった。真に賞賛に値するプレーヤーだと思う。だから、これから言うのは大谷本人には何の責任もないことだ。

 ファイターズはチーム編成上の不確定要素、「大谷翔平リスク」を常に抱えているのだと思う。「二刀流」のスーパースター、大谷はチームのエースであり、主力打者であるという、ほぼ前例のない存在だ。昨シーズンを考えるとローテーションの柱であり、クリーンアップの一角を務めるという、超人的な働きだった。今季はキャンプインの段階で右足首三角骨の骨棘(こっきょく)が公表され、オープン戦も野手としてのみ調整が進められた。栗山監督は走塁(特にベースを踏む足)に注文を出して、慎重に復調の経過を見ていた感じだろう。よくスポーツでは、痛い箇所をかばうとバランスがおかしくなって別の場所に故障が生じることがある。大谷が右足をかばったせいで左足に故障が生じたのかはわからないが、可能性は十分あり得る。

 で、「大谷翔平リスク」だが、骨棘が話題になる前は「もしかしたら今季は登板のない日、DHでなく外野手として出場する三刀流もあるのでは?」という報道すら流れていたのだ。これはチーム編成的に言うとものすごく計算が立ちにくい状態じゃないか。大谷は変数なのだ。エースローテーションでまわるかもしれないし、外野を守るかもしれないし、主軸で打つかもしれないし、その日は上がりかもしれない。その都度、大谷の状態で判断するしかない。

 僕は大谷が誰からも愛される好青年でよかったと思う。もし、セルフィッシュな性格ならチーム内で総スカンだ。大谷がスーパーなせいで、他の(スーパーではない)選手たちがワリを食う。「夢」は素晴らしいが、一面で「非常識」でもある。そして皆、常識のなかで野球をやっているのだ。例えば大谷が外野守備につく場合、仕事にあぶれる選手が出るだろう。

不確定要素が多い大谷翔平 ©文藝春秋

復帰後はどのようにチーム編成をしたらいいか

 「大谷翔平リスク」はWBCのチーム編成のときに表面化した考え方だ。小久保裕紀監督は大谷を先発投手の柱として起用する構想でいた。それが右足(軸足)の骨棘が判明し、最初「出場辞退」でなく「投手としては辞退か」というような報道が出る。僕は「投手辞退→野手出場」というのも難しいのじゃないかと思った。何でかっていうと、代表メンバーは既に発表されていて、ここで大谷が野手にまわると構想に変更が生じる。平たく言うと、仕事にあぶれる(?)選手が出る。結局、投手としても野手としても、WBC出場が見送られたのは御存知の通りだ。僕は大谷がキャンプを早々に打ち切って、手術するのだろうと想像した。今季は大谷抜きで前半戦をしのぐことになった、リハビリが順調なら夏頃には出てくるだろうと。

 それが手術しないで回復を待つことになった。まぁ、僕はケガの状態がわからないからチーム方針を信じるしかない。所属チームの場合、「大谷翔平リスク」はWBC代表の比ではない。開幕当初は「投手封印」の方針だったから、大谷抜きのローテーションが組まれた。が、経過次第では早目の投手復帰も考えられたのだ。先発投手が1枚、「変更もあり得る状態=不確定」になる。打者としては(DH出場)、開幕から絶好調だった。打撃不振のチームにあって近藤健介とともに貴重な戦力だった。このまま1シーズン、打者に専念すれば三冠王も夢じゃないのでは?という声さえ聞かれた。が、結果的に爆弾を抱えた出場は、チーム編成に大きな穴を開けてしまう。

屹立する東京スカイツリー ©えのきどいちろう

 とりあえず肉離れは全治4週間の診断だ。インフルエンザも4週間あれば完治する。で、その後は? 球速160キロのエースはいると思ってチーム編成したらいいか、いないと思ったらいいか。勝負強い天才打者はいると思ってチーム編成したらいいか、いないと思ったらいいか。手術はするのかしないのか。もう、不確定要素が東京スカイツリーくらい巨大に屹立している。たった一人の選手の欠場リスクが東京スカイツリーだ。それは大谷翔平のスーパーな存在感ゆえなのだが。

 栗山監督はたぶん「ガマン=信じて待つ」以外のマネジメントを要請されている。中田の内転筋もクセになりかねない厄介なものだ。大駒を失ったら、歩を前に進めて「と金」にするしかない。新戦力を育てながら捲土重来を期すのだ。開幕戦の「施政方針演説」にとらわれる必要はない。僕は横尾俊建がチャンスをもらって打席を務めるのだって、ドキドキハラハラ、大いに楽しんでいる。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

対戦中:VS千葉ロッテマリーンズ(梶原紀章)

※対戦とは同時刻に記事をアップして24時間でのHIT数を競うものです。HIT数はペナントレースの成績に加算されます。

※対戦は終了しました:日本ハム439HITー千葉ロッテ436HIT 3HIT差で日本ハムの勝利

 

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