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奥野 修司
2017/04/23

団地の面影を残した「団地」を探して――ひばりが丘団地「夢の跡」#2

50年後のずばり東京――建て替えても高齢化は止まらない

#1より続く)

加速する高齢化

 長らく住んでいる人々は、建て替え後のひばりが丘をどう考えているのだろうか。

建て替えで高層化したひばりが丘団地 ©文藝春秋

 引き続き鈴木さんら団地自治会のメンバーに話を聞くと、皆口々に新しい部屋の利便性について話をしてくれるが、かつての団地を語るときのような熱は感じられない。

 昭和50年に入居した丸山尚さん(79)は「ひばりが丘の賃貸住宅も65歳以上が4割もいる」と急速な高齢化を嘆いていた。

 事実、5年に1度の国勢調査にあわせて実施されるURの「定期調査」では、65歳以上の世帯の割合が平成22年に25%、最新の27年は34%と急増している(国勢調査では23%と26%)。

 だが、当事者らは団地の高齢化は当然の帰結だと考えているようだ。

高齢者の優遇

 建て替えが終わり、新しい部屋になれば当然家賃も上がったが、旧居住者のうち高齢者は、通常1平米2000円の家賃が50平米まで半額の1000円になる。つまり新規入居だと家賃は50平米で10万円なのが、長らく団地に住む高齢者は5万円なのだ。

「この折り込み広告を見てください。団地の敷地内に新しく建った3LDKのマンションが月々5万8000円のローンで買えてしまう。この広さを普通にURで借りようと思えば家賃が13万です。これではなかなか若い世帯が増えませんよ」(丸山さん)

居住者との繋がり薄く

 鈴木さんは、かつて子育て世代で溢れていた団地内のコミュニティも変化していると語る。

「最近は東南アジアなどの外国人の方も少しずつ増えています。自治会の加入率も落ちており、しかも表札を出さない人もいるので、誰が住んでいるのかすらわからない部屋もある。昔の4階建てのときは階段がひとつだから、同じ棟に住んでいればどんな方かわかるので自然とご近所付き合いが生まれました。でも、今はエレベーターだから、同じフロアに住んでいる人ですら顔がわかりません。個人情報なのでURも居住者のことを教えてくれなくて……。そういう時代なんですかね」

 URも「そのママ割」や「U35割」といった子育て世代の入居を促す割引を導入しているが、割引率を見ると古くから住む高齢者が優遇されていることは明らかだ。URは入居者の高齢化に対して有効な処方箋を持ち合わせてないのだろう。

お墓のない特殊な街

 実は、私が「団地」を取材テーマに選んだのには、もうひとつ理由があった。それは、団地のあとにできたニュータウンも含め巨大な街ができたのに、お墓のことが考慮された形跡がないことが不思議だったからだ。歴史を振り返ると、どの国でも町をつくるときは教会や寺院と一緒に墓地をつくってきた。人間が住まう「まちづくり」の基本をなぜ公団は考えなかったのだろう。

 ひばりが丘自治会の方々に話を聞いているときに、その疑問に対する答えがひょっこり顔を覗かせた。

――皆さんは、この団地に一生住むつもりでいたのですか。

 そんな質問を投げかけると、取材に応じてくれたメンバーの中で唯一の男性である丸山さんが、苦笑いしながら本音をこぼした。

「みんな、そうではないと思いますよ。仮の住まいというか、私はもう少し広いところに引っ越そうと考えていましたが、まあ、うだつがあがらなかったというか」

 そう、団地はそこで人生の終わりを迎えることが想定されずに設計された、特殊な街だったのだ。