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近藤 奈香
2017/04/22

ユナイテッド航空“引きずり降ろし問題”の背景に、米国内線のサービス低下

引きずられるダオ氏(Tyler Bridges氏ツイッターより)

“事件”は今月9日、シカゴからケンタッキー州ルイビルに向かうユナイテッド航空3411便で起きた。

「同便でオーバーブッキングが発生し、航空会社側は補償金800ドルとホテル代を引き換えに席を譲る乗客を募ったが、誰も手を挙げなかった。そこで、ランダムに選ばれた4名の乗客に飛行機を降りるよう求めたのです」(現地記者)

 3名は応じたが、ベトナム系米国人医師のデイビッド・ダオ氏(69)は「明日、診察があるので、今日、帰らないといけない」と拒否した。

「すると航空会社は、警備員を機内に呼び、ダオ氏を座席から引っ張り出し、通路を引きずって、強制的に降ろしたのです」(前出・現地記者)

 肘掛けに顔面を強打したダオ氏は流血、前歯2本が折れ、脳震とうを起こした。その一部始終を撮影した乗客がSNSに動画を投稿したことで、世界中で大騒動となった。

 1975年のサイゴン陥落に伴い、命からがらベトナムから船で逃れてきたというダオ氏は「人生で最もひどい経験だった」と語った。

「ところが同社のムニョスCEOは、“乗客の座席を再配置”したことのみ謝罪し、社内向けメールでは、“(ダオ氏は)ケンカ腰だった”と書いていたことが判明。事件後、同社の株価は4%も急落しました」(前出・現地記者)

「アジア人差別だ」と怒りの声もあがり、中国系SNS「微博(ウェイポー)」での動画再生回数は1億回を超えた。

「ダオ氏は同社を相手取って訴訟の意向を示していますが、ダオ氏の弁護士は、別の米国内便で韓国系乗客が人種差別を受けたと訴えた案件も担当しています」(同前)

 事件の背景には、“傲慢”という他ない米国内線のサービス低下がある。

「現在、米国内線旅客の8割をユナイテッドなど大手4社が占めています。その結果、顧客満足度を競う航空会社ランキングで米国大手はデルタ航空の35位が最高という体たらく。我慢していた乗客の不満が今回の事件で噴出した」(航空ジャーナリスト)

 ユナイテッド航空のスローガンは、〈フレンドリーな空の旅〉。今や、ツイッター上は〈“お客様を世界中、引きずり回します”に変えたら?〉といった皮肉なスローガンで溢れ返っている。