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『SMAP×SMAP』コント演出家が語る「慎吾くんは放置すると面白いんですよ」

『SMAP×SMAP』コント演出・小松純也さんインタビュー #3

『ごっつええ感じ』や『笑う犬』シリーズなどで、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンといったお笑いの天才たちのコント作品演出をした小松純也さん。実は『SMAP×SMAP』のコントコーナー演出も担当していたことをご存じだろうか。コントの時代を牽引した小松さんの目にSMAPのメンバーたちはどのように映ったのか。『笑っていいとも!』で起きたある“事件”や“戦友”たちの秘話も交えて語ってもらった。

©三宅史郎/文藝春秋

SMAPの5人はコントでの個性もバラバラ

――ダウンタウンのようなお笑いのスペシャリストの演出と、『SMAP×SMAP』でSMAPというアイドルを相手にコントを演出するやり方は、やはり違うものですか?

小松 違いますね。SMAPは本当に才能ある人たちでしたけど、どちらかというとこっちできちんと台本を作って、それを思いっきり演じてもらうという作り方でしたね。個人によってもまた違うんですけどね。本当にあのグループは個性が全然違いますから。バラバラです。例えば木村(拓哉)くんは、本をしっかり読み込んで、意図は何かということに真摯に向き合ってやりたいタイプです。だから、こっちの思っていることを実現するべく全力でやってくれる、すごく気持ちのいい人。逆に(香取)慎吾くんは、ある程度の彼なりの裁量というか、「台本ではこれで一応終わりだけど、最後に大きい笑いになったらそこで終わるから」って言って任せると、アドリブの部分を自分で考えて全力でやる。彼の凄みが一番出るところでしたね。あの人は放置すると面白いんですよ(笑)。

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――笑いに貪欲なんですか?

小松 貪欲だし、天才肌なところがあって、思いがけないことをやるんですよ。それがただ突飛なだけじゃなく、ちゃんとコントとして成立する。中居(正広)くんは自分で考えたい人だから、いろいろ相談しながら作っていく。草なぎ(剛)くんは、わりと忠実にやってくれる人ですけれども、あの人もどちらかというと「何とかしなさい」っていう状況に追い込まれると面白い。っていうか、人柄が出る。彼はやっぱりその人柄が出ることが面白い。稲垣くんは、たぶん自分が面白いことをやることがそんなに得意ではないと思っている人なんですけど、それを一生懸命やった時に出てくる脇の甘さが面白い。もちろん芝居はできるし、上手。でも、自分の中で抵抗があるんですよ、人を笑わすことに。「ゴロクミ」とか、自分がそんなことをやるのかっていう抵抗が表に出ちゃうんです。その結果、愛嬌が生まれる。笑いっていろんな要素でできてるから、愛嬌が笑いになる場合もあるし、カッコよさが笑いになることもある。

木村拓哉が見せた『TV's HIGH』での“座長の責任”

――印象に残っているコントは何ですか?

小松 僕が『スマスマ』で一番やったのは、「竹ノ塚歌劇団」っていうコント。毎回オリジナル曲を作ってやる、ものすごく金のかかるコントなんですけど、男が男役を演じるために必死でやるっていう訳の分からない話。それはやっぱりかっこいいからできる。最後、歌劇の舞台のシーンになるんですけど、そこできちんと歌って踊れるから笑いに作品性が生まれ、クオリティーが高いものになる。これはSMAPにしかやっぱりできないですよね。演出という意味では、その人にしかできないことを常にやれるようにするというのを心がけてましたね。もちろんSMAPの番組は、彼らが素敵に見えなきゃいけないっていうところがあるので、そこを考慮しつつなんですが。ネタの発想とかはこちらがやる。そこをメンバーにきちんと演じてもらうという感じ。そう考えると『笑う犬』は僕らと演者がお互いにアイデアを出し合っていましたから『スマスマ』と『ごっつ』の中間くらいのイメージですね。

――木村さん主演のドラマ仕立てのバラエティ『TV's HIGH』(2000年~01年)では脚本家の三木聡さんや宮藤官九郎さんと一緒に番組を作られていましたよね。

小松 それぞれの持ち味がありますね。あの番組は夜中に会議をやってその場でバンバン作っちゃうっていう作り方をしてました。三木さんは小ネタ大魔王みたいな人ですから、やっぱり一番ぶっ飛んでる。それは間違いない。でもあの人の言うとおりに全部作ったら番組がメチャクチャなことになっちゃう(笑)。ぶち壊しにするようなことばっかり言うんです。まあ、スゴいです、発想が。じゃあ自分が監督をやる時はどうなるんだろうと思ったら、ちゃんとまとめてるから腹立つんですけど(笑)。天才だと思います。宮藤くんは、どっちかというと手堅いというか、カッチリ作るし、仕事が早いという印象ですね。そしてもちろん面白い。

――木村さんは結構ノッてやっているという感じだったんですか。

小松 そうですね。代官山の喫茶店で打ち合わせして作るんですけど、「今度こんなことやろうと思ってる」って、彼も結構アイデアを出すんで面白かったですね。すごく楽しんでやってたと思います。ちょうど主演していた月9の『HERO』で忙しかったタイミングだったけど、クソ忙しいのに最終回の収録の最後の最後までいようとするんです。『TV's HIGH』の最後のカットはYOUさんが演じてた「のっち」が、道で薬を拾って飲んでしまって騒動が起こるっていう場面でした。のっちが中島みゆきのメロディーで「道に落ちているお薬を飲んだことがありますか~♪」って歌うシーンなので、木村くんはそこにいなくてもいい。なのに木村くんは座長の責任でずっとそれが終わるのを待ってるんですよ。こんなしょうもない番組でも(笑)。ホントにいい人なんですよ!