昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

大型企画
2020年「日本の姿」 各界の慧眼が見抜いた衝撃の近未来

古市 憲寿
2017/05/01

保育園義務教育化なぜできない――2020年「日本の姿」

source : 文藝春秋 2016年7月号

genre : ニュース, 社会, 政治, 教育

 東京が56年ぶりの五輪を迎える2020年、政治や経済、国際関係はどう変化しているのか。スポーツや芸能、メディアや医療の世界には果たしてどんな新潮流が――。各界の慧眼が見抜いた衝撃の「近未来予想図」。

 今回は、社会学者の古市憲寿氏が、保育園をとりまく日本社会の変化を予想する。

(出典:文藝春秋2016年7月号)

解消されない保育園、保育士不足

 炎上、辞任、死亡……。関係者が次々に不幸になるという「呪いの東京オリンピック」がついに開催される今年、2020年。国会でも話題になった「保育園落ちた日本死ね」というブログ記事が発表されてから4年。

 国中がオリンピックに沸き立つ中、怒りの収まらない人々がいた。子どもを持つ親、特にお母さんたちだ。「オリンピックをするお金はあるのに、なんで保育園は充分に整備されないの」と彼女たちは怒る。

©共同通信社

 この国の都市部では、慢性的な保育園不足が続いていた。特に認可保育園という公費運営の保育園は倍率が高く、入園が難しいという状況が続く。厚生労働省が待機児童に関する調査を始めてから25年以上が経つが、今でも潜在的な数を含めれば100万人程度の待機児童がいると見積もられている。

 国はこの数年、繰り返し「子どもを生みやすい環境を整備する」と訴えてきた。2015年、安倍政権は新「3本の矢」なる政策目標を発表、その1つに「夢をつむぐ子育て支援」を掲げ、日本の出生率を上げることを宣言していた。

 しかし保育園の整備は遅々として進まなかった。もちろん、全ての自治体が何もしてこなかったわけではない。待機児童問題が特に深刻な都市部では、公園や小中学校の校庭を転用したり、何とかして保育園の数を増やそうとしてきた。

 しかし、それを上回る数の女性が働き始めたのだ。かつて「一億総活躍社会」という標語を掲げていた自民党からすれば、女性が働く社会というのは、歓迎すべきことだろう(「一億総活躍社会」という言葉はもはや誰も使わなくなってしまったが)。

 去年、「女性は家にいて子どもを育てるのが本来のあり方だ」「子どもはお母さんがいて初めて育つ」と発言した政治家に対しては、批判の声が集まり、ついに議員辞職に追い込まれてしまった。労働力不足の時代に「女は家にいろ」という考えは、もはやタブーになりつつあった。

 このように人々の価値観は少しずつ変わってきたにもかかわらず、保育園不足は解消されなかった。

 保育士不足も深刻なままだった。保育士資格は合格率が約2割の難しい試験だ。それなのに、一般的に保育士は給与が低く激務。国も補助金の額を増額するなどしてきたが、資格を持っていながら他の仕事に就く人も多い。

はてなブックマークに追加