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河野 太郎
2017/05/07

文科省国立大「現役出向」241人リスト #2

問題は天下りだけではない。これが“植民地化”の実態だ

60件以上もの違反事例が発覚した、文部科学省をめぐる「天下り斡旋」問題。自民党行革推進本部長・河野太郎氏は、現役の文科省職員による国立大学への「現役出向」が、「天下り斡旋」の温床となっていると指摘(第1回参照)、241名が計83大学に出向していた実態を明らかにした。2004年に「国立大学法人」に衣替えし、独立したはずの国立大学が文科省からの出向を受け入れる理由とは――。
(出典:文藝春秋2017年4月号・全3回)

河野太郎・自民党行革推進本部長 ©文藝春秋

◆ ◆ ◆

「大学の自治」を逆手に

 なぜ独立したはずの国立大学は、文科省の出向を受け入れるのでしょうか。

 文科省は、「各大学の学長からの要請に基づいて送っています」という説明を貫いています。国会でも、文科省は同様の答弁をしています。

 大学側に人材を求められて派遣している――「大学の自治」を逆手にとった建前論です。昨日今日に独立した組織ならば人材不足という事態も想定できます。しかし、各国立大学法人は発足して10年以上が経過しています。それでもなお「事務局長になる人材が内部にいません」と言うのであれば、育成できなかった学長の職務怠慢以外のなにものでもありません。

 文科省からの現役出向を受け入れる本当の理由は、私は「お金」だと考えています。

 国立大学には、年間1兆円を超える「運営費交付金」が国費から投入されています。各大学の収入の3割から4割を占める、この運営費交付金を配分するのは、相変わらず文科省です。

 運営費交付金は各大学が自由に使途を決められる安定的な補助金です。文科省に設置された「国立大学法人評価委員会」が各大学の中期目標を評価し、その評価が交付金に反映されます。2016年度からは大学間でさらに競わせようと、運営費交付金の約1%にあたる100億円程度を、各大学が定めた改革の実行状況に応じて、配分し始めたのです。

 私は、複数の大学教授から直接、「文科省から来ている人が大学にいると、情報が早いから補助金を取りやすい」という話を聞いています。つまり「補助金を配分する評価基準」という情報を持っているのは文科省です。それを早く耳にすることができれば、大学側も迅速に対応することができるわけです。

 今日、教育分野での競争的資金が増え続けています。その結果、本省との橋渡しができて、また情報を持っている文科省官僚の価値が高まってしまったのです。

事実上の天下り支援制度

 教育現場を文科省の支配下に置きたい――その意識は、現役出向の問題でも、天下り斡旋の問題でも共通しています。

 実際に「現役出向」と「天下り」がリンクしていることも明らかになりました。

 東京新聞の報道によれば、2008年末から昨年9月末までの間に、文科省から大学などへ現役出向した管理職経験者26人が、現役出向から文科省に復職した当日に文科省を退職。翌日に大学などに再就職していたのです。うち4人は出向先の大学にそのまま天下っていた。つまり、「現役出向」という名で事実上の天下りが行われていたのです。

 かつては、文科省以外でも同じようなケースが続発していました。霞が関の「官民人事交流制度」の悪用です。若手官僚に民間企業での経験を積ませることが狙いだったこの制度。実際調べてみると定年間際の50代が民間企業に出向しているケースが多かったのです。そして、今回の報道と同じように一旦官庁に戻ってきて、即日退職して出向先に再就職する。民間への出向が役所ぐるみの天下り支援制度になっていました。

 20代、30代の職員はスキルを磨くために積極的に外に出るべきですが、50代は明確な必然性がなければ認めないルール変更を自民党の行革推進本部の提案で実現しました。しかし、国立大学への現役出向からの直接再就職に関しては、ルールが徹底されておらず、温存されてきたのでしょう。