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イケメン綱引き、ポッチャリモデル……面白イベントの見つけ方 田村セツコ×辛酸なめ子

「週刊文春」と「いちご新聞」の人気連載作家によるヨコモレ対談

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「週刊文春」の名物コラム「ヨコモレ通信」が惜しまれつつ終了、『ヨコモレ通信MAX マニアック編』『ヨコモレ通信MAX セレブ編』として電子書籍化されました。辛酸なめ子さんが大ファンであり、「ヨコモレ通信」の読者でもあったというイラストレーターの田村セツコさんとの対談が実現、発売を記念して特別公開します。

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『ヨコモレ通信MAX マニアック編』(辛酸なめ子 著)
『ヨコモレ通信MAX セレブ編』(辛酸なめ子 著)

辛酸 本日はどうもありがとうございます。2月のセツコさんの誕生日パーティでお会いして以来ですね。

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田村 その節はありがとうございました。なめ子さんって、パーティや個展に、そよ風のようにすっと入ってきて、また知らぬ間に帰っているでしょう。いらしたことに気がつかないことがよくあるのよ。

辛酸 えっ、そうなんですか!?

田村 そうなの、姿に気がついて「あれっ! なめちゃん、来てくれたのね!」って、周りのみんなに教えようと思うと、なめ子さんの大ファンに限って、先に帰っていたりしてね。

辛酸 会場に入る時に、気配を消そうと意識している訳ではないのですが(笑)。ただ、パーティや宴会から帰る時は、誰にも気づかれないようにしています。私が「帰ります」と言ったせいで、みんなの話が止まってしまうと申し訳ないので。

田村 それはお見事。私、なめ子さんの大ファンなんです。といっても、自分でもなめ子さんのどこに憧れているのか、よく分かっていないのだけれど。そういう、分析を超えた存在。はっきりここに憧れているというポイントがひとつあって、それが、なめ子さんの気配を消せるところなんです。気配の消し方が人間離れしていて、神出鬼没ですよね。

辛酸 「ヨコモレ通信」でも、後で原稿のチェックがないように、取材の申請をしないで、一般の人と同じように参加していたので、できるだけ気配を消していました。

田村 そうなんですね。「ヨコモレ通信」で毎回、あちこち行かれるなめ子さんのフットワークの軽さに驚かされていました。

辛酸なめ子さん、憧れの田村セツコさんと。©文藝春秋

辛酸 ありがとうございます。体力の衰えを感じながらも、イベントに行くと、参加者のエネルギーを貰って、元気になれました。

田村 取り上げるイベントは、担当編集者と相談して決めていたの?

辛酸 いいえ、大体自分で血眼になって探していました。13年も続いた連載なので、毎年恒例で行われるイベントだと、2回目は書けないんですね。だから、最近ではネットで「4月25日」と日程だけ入れて検索したり、「大会」「フェス」といった単語だけで検索していました。意外に、街で見つけた区民会館のチラシや、掲示板にイベントの告知があったりして、役に立つんですよ。

田村 うわ~、それは大変だったでしょう。

辛酸 イベントを選ぶ時に重要なのが、どのくらいの規模かということなんです。参加者が数人しかいないイベントに行った時は大変でした。一般のOLのふりをして参加したのですが、主催者と話をしなくてはならなくて、あやうくバレそうでした。そういうスリルは常にありましたね。

田村 なるほどねえ。なめ子さんの文章ももちろん面白いのだけれど、昔から画風が変わらないイラストもすごいわよね。細かくて大真面目な絵なんだけど、どこかおかしい。この「人間五輪」の絵なんて、特にお気に入りなの。ふふふ。

セレブ編「ジャニーズ・オールスターズ・アイランド」より。©辛酸なめ子 

辛酸 「ジャニーズ・オールスターズ・アイランド」のイラストですね。イラストは、隠し撮りした写真か、写真が撮れない時はメモと記憶で描いているんです。

田村 へぇ~。このイラスト、大真面目なのに何度見ても笑ってしまうわね。なめ子さんってたたずまいは、おしとやかでレディーそのものなのに、内面はいたずら小僧みたいなところがあるから、そのギャップがおかしくて。