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連載歴史・時代小説の歩き方

女は愛嬌、男は読経――大江戸僧侶モテモテ事件簿

2016/03/05

genre : エンタメ, 読書

『エースをねらえ!』で桂コーチが言っていた。「古来僧侶はモテるんだよね。むりもない、菜食だから体がダブつかんし精神が高いから目が美しい!」――とまあ、いきなり平成生まれの坊ちゃん嬢ちゃんには意味のわからない話で申し訳ない。先駆者は常に捨て石なのよ。

 マンガでそのくだりを読んだのはまだ中学生の頃で、お坊さんカッコイイという感覚はよくわからなかった。でも歴史小説を読んでみると、いやあ、いるんですねえモテるお坊さん。イケメン僧侶。しかも史実。これけっこうリアルに「ボーズをねらえ!」案件なのね。ひろみ、よくって?

 有名なのは、伝説の域でどこまで史実と言えるかは不明なんだけど、能の「道成寺」にもなった「安珍・清姫」。延長6年(928年)、奥州白河から熊野に参詣にきたお坊さんの安珍はどえらいイケメンで、彼を見かけた清姫は一目惚れ。積極的に迫りまくり、夜這いまでかけちゃう。

 そもそもお坊さんは恋愛御法度、安珍はビビって逃げ出すけど、清姫はあきらめない。騙されてもスカされても、挙げ句の果てに金縛りの術をかけられた隙に逃げられてもあきらめない。追って追って追いまくる。しまいには蛇の化身になって追いかけた末、梵鐘の下に逃げ込んだ安珍を焼き殺しちゃう。平安時代の肉食女子によるストーカー殺人ですね。

 時代が下がって江戸期になると、史実として史料が残っているものも。中でも、江戸城大奥最大のスキャンダルと言われた「谷中延命院一件」はすごいぞ。僧侶と大奥下女の密通事件だ。そもそもこの時代、寺と大奥ってのは異性と関係を持つことを禁じられていた二大職場。そのふたつが結びついちゃったんだから、そりゃもう大騒ぎさ。生臭いことこの上ない。まったくいい読経してるぜ。僧侶だけに(違う)。

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