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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2016/02/06

しんげんだもの
――『真田丸』が暴いた武田滅亡の真犯人

genre : エンタメ, 読書

真田昌幸「浅間の山が火でも噴かぬ限り武田のお家は安泰にございます」
浅間山 (ちゅどーん!)

 という、まさかの火山オチで始まった今年の大河ドラマ『真田丸』。浅間山ナイス助演。でもね、実はこの天正10年2月14日の噴火は意外と大事なことなんです。が、その話は後にして序盤の感想を少々。

『真田丸』は主役の信繁にまだ見せ場がない。というか、あと15年くらい彼に見せ場はないので、どうしても脇に目がいきますわな。序盤、何より新鮮だったのは、平岳大演じる武田勝頼が悲哀に満ちてとても感動的だったこと。だいたいダメ息子として描かれてきたわけですよ勝頼って。なのに何なの、この泣ける勝頼様は!

 一夜にして勝頼贔屓となり、「勝頼はダメ息子なんかじゃない!」という根拠のない信念のもと、勝頼と武田家の滅亡が描かれている小説を読み比べてみた。今回読んだのは、中村彰彦『真田三代風雲録』(実業之日本社文庫)、火坂雅志『真田三代』(文春文庫)、伊東潤『武田家滅亡』(角川文庫)、新田次郎『武田勝頼』(講談社文庫)の4作です。

 まずは中村彰彦『真田三代風雲録』を……うああ、ダメ息子だ。めちゃくちゃダメ息子だ勝頼……。そもそも章題からして、信玄が亡くなる章が「巨星墜つ」、その次がいきなり「不甲斐なし勝頼」で、「武田家滅亡」と続く。早っ! 巨星が墜ちてから滅亡まで早っ! しかも「不甲斐なし勝頼」って! そのまんまかい。

『真田三代風雲録』では、勝頼は耳に心地よい側近の言うことしか聞かず、信玄時代からの宿老を疎んじ、「勝頼が戦略的思考に欠け」「北条氏政をも敵にまわし」「家臣団の一部からも見限られて兵力激減した」ことが武田家滅亡の理由とされている。容赦ないわぁ。

真田三代 上 (文春文庫)

火坂 雅志(著)

文藝春秋
2014年11月7日 発売

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真田三代 下 (文春文庫)

火坂 雅志(著)

文藝春秋
2014年11月7日 発売

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