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第6回:山田明子についてアラフォーのミューズ、山田明子。

genre : エンタメ, 読書

 真木蔵人は文句なくカッコイイ。そこに異論はない。しかし、良家の子女である山田明子が不良っぽい真木蔵人を選んだのは、私には意外でした。真偽のほどはわからないけれど、彼にはトラブルの噂が絶えなかったし、たしか既にお子さんがいたはず。

 いやいや、子どもがいる人と結婚するのが悪いという話ではありません。ただ、山田明子はもっとうまいことやると思っていたのです。たとえば家族ぐるみで付き合いのある良家のお坊ちゃんとか、学生時代からの運動部の彼氏とか、そういう人とシュッとあるべきところに然るべきタイミングで納まって生きていくだろう。舗装された道に敷かれた赤じゅうたんの上を、軽やかに歩いていくだろう。そう思っていたのです。

 良家の娘だからこそ、不良っぽい男に惹かれるってのもあるよな、好きになったらまっしぐらなタイプなのかな? なんて思いながら、私はまた山田明子の存在を忘れました。

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 2010年。ツイッターで山田明子を見つけました。シンディー・クロフォードの次、32番目にフォローして彼女のツイートやブログを見るようになりました。ブログのタイトルは「ママは海女(サーファー)」。へー! サーフィンが好きなのね。だから真木蔵人と。なるほど、今は千葉に住んでいるんだ(当時)。旦那様にそっくりなひとり娘を「いづみどん」と愛称で呼び、臆面もなく可愛がる。モデルにもかかわらず、日焼けもお構いなしにすっぴん写真を載せるのが印象的でした。

 誰もが自分の生活を身の丈以上に見せたがるのが当然のご時世で、山田明子はブレた写真も酔っぱらった写真もお構いなしにバンバン載せる。ツイッターでは家が古くガタがきていることにブツブツ文句も言う。真木蔵人の息子も、ノア坊ちゃんという名前でよく出てくる。彼女は広い心と深い愛情の持ち主なんだろうと思いました。「東京から少し離れたところでゆったりロハスライフ」なんて気取っても良さそうなのに、自分を高く見せるようなことは一切しない。そんな生き様が伝わってくるブログが素敵でした。たまに千葉のヤンママみたいな写真もあるけれど、彼女の笑顔は相変わらず高貴。そして、相変わらず幸せそうでした。

 2012年、雲行きが怪しくなります。飾らないツイートが魅力とはいえ、「明子、そこは隠しておけ」と他人の私が心配になるようなツイートが続きました。8月、彼女はシングルに戻り、名前をHARUKOに変えました。

 私は勝手に残念がりました。周囲の人からずーっと変わらぬ愛情を注がれて生きていくのが山田明子だと思っていたから。妬みとか嫉(そね)みとか自己嫌悪のような感情から、一切切り離されたところにいるのが山田明子だと思っていたから。

 芸能人が離婚を経て人を信用できぬ顔になっていくのを、テレビ越しに何度も見てきました。そういうことが山田明子にも起こるのではないかと、これまた勝手に気に病みました。明子にそれは似合わない。どうか持ち前の明るさで乗り越えますように。

 一般人というのは勝手なもので、芸能人の名前が世間を賑わすときだけこういうことを思い、そしてまた忘れていきます。私もこれまでに、何度も山田明子を忘れてきました。私は彼女がモデルを務める雑誌は読まないし、また少しずつ山田明子への熱が冷めていくのかと思っていました。

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