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遺産を役立てる方法として、いま注目の「遺贈」とは?

遺産を誰かのために役立てたい――。その意思を確実に実行するためには、遺言書によって遺産を譲渡する「遺贈」を利用するといいだろう。その方法について、遺贈に詳しい弁護士の佐々木達憲さんにお尋ねした。

遺贈とは遺言書によって確実に履行される寄付

京都市役所前法律事務所 弁護士 佐々木達憲氏

 社会貢献、恩返し、活動に共感し応援したい――。そんな想いから寄付を行う人は少なくない。自分亡き後、遺産を広く世の中のために役立ててほしいと願う人もいるだろう。遺産を特定の団体などに寄付するためには、どうすべきか。

「相続発生後に遺産を寄付するよう、法定相続人に依頼することもできますが、実際にそれが実行されるかどうかは不明です。一方で遺産は、法定相続人以外の第三者であっても、遺言書に記すことで承継することができます(遺留分は除く)。ですから、自分亡き後、遺言書で寄付先、金額を指定する『遺贈』を利用するのが確実です」と弁護士の佐々木達憲氏はアドバイスする。

 遺贈とは、遺言書を使って法定相続人でない第三者や特定の団体に遺産を承継させること。遺言書に記さなければ、遺産を法定相続人以外に継がせることはできない。

「遺言書は大きく分けて自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。秘密証書遺言は、あまり使われておらず、最も多いのは自筆証書遺言ではないでしょうか。これは手書きで残すもので、形式さえ満たしていればノートや便せんであっても有効です」

遺言書の種類

 自筆証書遺言の場合、全文を手書きし、捺印、日付など全てがそろっていないと遺言は無効になってしまうため、慎重に作成する必要がある。過去には日付を「吉日」と入れたがために無効になった例もあるという。

「自筆という性質上、手軽に作成出来るというメリットがあります。その反面、本当に故人が書いたのかと疑われる場合もあります。また改ざんされる危険性もあるでしょう。亡くなった後、遺言書が出てきてからは家庭裁判所に届け、検認を得るなど面倒な点もあります」。手軽に実践でき、書く段階での費用は不要だが「リスクが高い方式であることを認識して欲しい」と佐々木弁護士は語る。

募金箱への寄付と同じ感覚で行う

 もっとも安全で確実なのが公正証書遺言だ。「全国の都道府県にある公証役場に出向き、そこで元検察官、元裁判官が公の証人として、遺言にお墨付きを与えてくれます」

 公証役場では、遺言の内容を公証人に口述し、公証人が遺言書を作成する。偽造や改ざんの余地はなく、本人確認も厳格に行われる。また認知症などで誰かに言わされていないか、本人に意思が備わっているかという点についても確認が行われる。

 安全で確実な分、公正証書遺言には、作成手数料がかかることは知っておきたい。証人は親族以外で、利害関係のない第三者を2名以上用意する必要がある。しかし、この証人がなかなか難しい。

「誰も証人がいない方であれば、寄付先団体への橋渡し役になっている公益法人などに依頼するというケースもあります。橋渡し役なので利害関係はなく、そのような法人の職員が証人となるのです」。公正証書遺言を作れば、公証役場で保管され、安全性も高い。しかし気をつけるべき点はまだある。

「家族など信頼できる人に遺言書を作ったことを知らせておかなくてはなりません。また遺言を書く段階で執行者を指定する必要があります。その方が預貯金を動かし、不動産の名義を変えるなど物理的に遺言を実行するわけです」

 遺贈と聞くと大金を想像するかもしれないが「募金箱に寄付するのと同じ感覚で、気軽に行って問題ありません」と佐々木弁護士。自分の意思を残すために専門家に相談、または寄付先が決まったら、その団体に遺贈の旨を伝えるのも良い。

 また、故人から相続した財産の一部を、寄付を通じて社会のために役立てたい、と考える人もいるだろう。寄付した相続財産には相続税が課税されないことから、昨今では実施する人が増えているという。

 まずは応援したい、活動を支援したいと思える団体を見つけて、実際に相談してはどうだろう。個別の状況や1人ひとりの想いに応じて、具体的な方法をアドバイスしてもらえるはずだ。

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