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勉強が気になっているすべての人に向けて――気鋭の哲学者・千葉雅也による本格的勉強論・はじめに

勉強が気になっているすべての人に向けて――気鋭の哲学者・千葉雅也による本格的勉強論・はじめに

異色のベストセラー『勉強の哲学』を特別公開

2017/04/30
note

 深くは勉強しないというのは、周りに合わせて動く生き方です。

 状況にうまく「乗れる」、つまり、ノリのいい生き方です。

 それは、周りに対して共感的な生き方であるとも言える。

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 逆に、「深く」勉強することは、流れのなかで立ち止まることであり、それは言ってみれば、「ノリが悪くなる」ことなのです。

 深く勉強するというのは、ノリが悪くなることである。

 

 いまの自分のノリを邪魔されたくない、という人は、この本のことは忘れてください。それは、ひとつの楽園にいるということです。そこから無理に出る必要はありません。

 勉強は、誰彼かまわず勧めればいいというものじゃありません。


 もし、何か生活に変化を求めていて、しかも、これまでのようにはノれなくなる方法にそれでも興味があるならば、ぜひこの先を読んでみてください。

 これから説明するのは、いままでに比べてノリが悪くなってしまう段階を通って、「新しいノリ」に変身するという、時間がかかる「深い」勉強の方法です。

 

 勉強を深めることで、これまでのノリでできた「バカなこと」が、いったんできなくなります。「昔はバカやったよなー」というふうに、昔のノリが失われる。全体的に、人生の勢いがしぼんでしまう時期に入るかもしれません。しかし、その先には「来たるべきバカ」に変身する可能性が開けているのです。この本は、そこへの道のりをガイドするものです。