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【ヤクルト】伊藤智仁のここだけの話 “4月のMVP”はあのピッチャー

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/05/04
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「4月のMVP? ホントに難しい質問やな」

――ここまでで印象に残っている試合は?

伊藤 勝ちゲームでは、開幕戦(3月31日)の石川。負けゲームでは、熊本(4月18日)の山中ですね。石川は雨が降って足元がぬかるんでいる中で、よく投げましたね。あの試合は僕も緊張していました。今年、キャンプスタート前に、「石川を開幕投手にしたい」と真中満監督に進言したのは僕です。「この試合は落とせない」という場合に頼りになるのは、やっぱり石川だから。投げる姿、普段の練習に取り組む姿勢はチームを引っ張る覚悟がある。それを小川には発奮材料にしてほしいし、今年は小川の目の色も変わってきていると思いますね。

――熊本での巨人戦の山中については?

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伊藤 前の週の中日戦が雨で流れたんですよね。で、ブキャナンをスライドさせるのか、山中にするのか迷ったんです。当初は、「地元熊本での凱旋登板」ということは度外視していたんだけど、山中を中5日で投げさせても、コンディションはよかったので「じゃあ、熊本で登板させよう」となりました。負けたけど、気持ちの入ったいいピッチングでした。本人の気合いも違いましたね。ただ、あの変てこりんなボークはわけわからん(18日は山中が反則投球と判断され、19日にはブキャナンがボークを宣告された)。

――前半戦だけで、ボークが相次ぎましたね。14日のDeNA戦、ルーキのボークに関して「納得いかない。今度は10分間静止させる」と言っていましたね。キレたんですか?

伊藤 (大きくうなずく)。だって、あれによって、バッターが打ちにくい、タイミングを狂わされるなら、当然ボークだけど、バッターは十分準備していてきちんと構えていたからね。BSO表記にしたり、統一球にしたり、「国際ルールに統一を」と言いながら、ボークに関しては、アメリカ人を標的にする。それだけは意味が分からない。

――さて、「伊藤智仁が選ぶ4月のMVP」を決めてほしいのですが?

伊藤 うーん、難しいね(笑)。ホントに難しい質問やな。……ブキャナンかな。彼のプレースタイルは本当に気持ちいい。周りが「彼を勝たせたい」と思わせるピッチャー。バッティングも守備も、何をやらせても一生懸命。試合になると、普段とは別人のような表情だしね。自分が降板した試合でも、チームが勝てば普通に喜んでいるし。キャンプでも、外国人用の特別メニューじゃなくて、日本人と同じメニューで夜間練習までしていたからね。

――5月の「要注目ピッチャー」は誰ですか?

伊藤 そりゃあ、全員だけどね(笑)。強いて挙げるならば、小川とブキャナン。彼らには長いイニングを投げて、ブルペン陣をラクにしてほしい。

――ありがとうございました。また来月もお願いします!

伊藤 ……あと、最後にひとついい? ヤクルトファンの多くは、ルーキのことを心配しているかもしれないけど、我々はそこまで心配していないんです。やっぱり、去年33ホールドを挙げた実績は伊達じゃないですよ。毎日スタンバイしてもへこたれないし、ああ見えてチーム思いだし、根は真面目だし。たまに、ものすごいポカをするけど、ピッチャーとしてはずば抜けた能力を持っているし、ポテンシャルも高い。シーズン中の今もずっと彼を教育している最中。今までの大雑把なピッチングから、細かいピッチングに向かっているところなので、どうか彼を温かい目で見てあげてください(笑)。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2417でHITボタンを押してください。

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