昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

赤坂太郎
2017/05/10

「自公離反」「民進崩壊」を呼ぶ“小池台風”

あくまで強気の安倍は何を思うのか

 4月17日夕、東京・銀座に完成した商業施設「GINZA SIX」のオープニングイベントに出席した首相・安倍晋三は大はしゃぎだった。

 同席した東京都知事・小池百合子に触れ、「銀座と言えば、『銀座の恋の物語』です。小池知事と一緒に歌ってもいいんですけども」と笑いを誘い、施設で扱う各地の名産を紹介する際には、こんな冗談まで飛ばした。

「(挨拶の)原稿には残念ながら(安倍の地元)山口県の物産等々が書いてありません。よく『忖度』してほしい」

 学校法人「森友学園」の問題で注目を浴びた「流行語」を使ったジョークに再び会場は笑いと拍手に包まれた。

 この日午前中、安倍も出席する衆院決算行政監視委員会があったが、野党から森友問題に関する安倍への質問はなかった。3月23日の学園理事長(当時)・籠池泰典への証人喚問をピークに世論の関心も低下、野党に新たな追及材料がないことをさらけ出した。

 森友問題の真相はこのまま藪の中になる公算が大きい。ただ、この問題が残した爪痕は深い。第2次政権発足以来、安倍自身を巡るスキャンダルがなかったことが何よりの強みだった。それが安倍ばかりか昭恵までもが渦中の人となった。同時に安倍が掲げる「保守」の欺瞞性をも露呈したからだ。

安倍晋三・昭恵夫妻 ©雑誌協会代表

 もともと、学園が運営する幼稚園では行幸啓への出迎えや自衛隊行事に園児を参加させていたが、直接的な愛国教育は行っていなかった。多くの保護者が違和感も抱くことなく、近隣の子弟が通う普通の私立幼稚園だった。

 幼稚園の教育内容が一変するきっかけは安倍だった。籠池の長女町浪が学園の新理事長就任の挨拶で触れている通り、2006年の第1次安倍政権で成立した改正教育基本法を巡る「愛国心」論議に触発され、教育勅語を園児に暗唱させるなど「戦前回帰」ともいえる教育を推し進めるようになる。

 右傾化ブームに乗って学園が「保守コミュニティー」の1種のシンボル的存在となり、学園に櫻井よしこ、中西輝政、曽野綾子、百田尚樹といった安倍に近い文化人が次々と訪れ講演を行うようになった。安倍の支持基盤と合致する学園に、「関わって損はない」(周辺)と安倍夫妻がそろばんをはじいたのは想像に難くない。

 学園問題が浮上した当初、いみじくも安倍が籠池との関係性について「私の考え方に非常に共鳴した人」と説明している。問題が深刻化するにつれ、籠池を突き放すようになるが、基本的に学園の教育内容については否定していない。教育勅語の教材活用を容認する答弁書の閣議決定まで行っている。

「首相夫人が公人か私人か」が論争を呼び、昭恵が「秘書」と呼ぶ夫人付の政府職員が5人もいることが公になったのも痛かった。自民党幹部は「森友学園自体は忘れ去られても、首相の戦前回帰性と、昭恵の公私混同が世間の記憶に強く残った」と指摘する。

 だが一方で、内閣支持率は50%台で下げ止まり回復傾向を見せる。安倍は「森友問題はもはや過去の話題。やるべき政策をやる」と自信を深め、連立パートナー公明党にも強気を貫く。後半国会の焦点である「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の審議日程を巡り、自公間の軋みが表面化した。

「会期延長してでもこの法案はやりたい」。3月30日昼。官邸で公明党代表・山口那津男と向かい合った安倍は、4月6日の法案審議入りを促した。性犯罪を厳罰化する刑法改正案を先に審議すべきとする山口は「有権者にちゃんと説明できる理屈を考えてほしい」と突っぱねた。

はてなブックマークに追加