昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

大山 くまお
2017/05/13

安倍首相「2020年改憲」をめぐる「総ツッコミ」を振り返る

自民党内部からさえ、激しい反発が

安倍晋三 首相
「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」

時事ドットコムニュース 5月3日

 フランス大統領選、韓国大統領選と国外での政治の動きが多かった週だが、安倍首相の改憲発言が内外で物議を醸している。憲法記念日からの一連の発言、反応をここで振り返ってみたい

 5月3日、安倍首相は日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が開催した憲法改正を求めるイベントにビデオメッセージを寄せた。ちなみにビデオメッセージは毎年恒例のもの。安倍首相のメッセージ内容は、主に次の3点に集約される。

・改正憲法の施行目標は東京オリンピック開催の2020年
・戦争放棄の9条は維持し、自衛隊に関する条項を追加する
・高等教育までの教育無償化も改憲の優先事項

ビデオメッセージで「日本人共通の大きな目標」を謳った ©時事通信社

 なかでも強調していたのが、2020年に施行目標を置くことだ。安倍首相は東京オリンピックを「日本人共通の大きな目標」として、「新しく生まれ変わった日本がしっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている」とビデオメッセージの中で発言した(NHK NEWS WEB 5月3日)。

石破茂に伊吹文明……自民党内からも多くのツッコミ

 ここで、東京オリンピックと憲法改正って何か関係があるの? という素朴な疑問がわく。

 答えは簡単だ。安倍首相が来年秋に予定されている自民党総裁選で再選を果たせば、任期は2021年9月までとなる。すでに今年3月、総裁任期をこれまでの「連続2期6年」から「連続3期9年」とする党則改正を行っているからだ。歴代最長政権を視野に入れた安倍首相のもとで東京オリンピックが開催され、同時に憲法改正も行われる……という青写真である。非常にわかりやすい。

 ところが、自民党内からも安倍首相に対する批判が相次いだ。安倍首相が提案した案が、2012年に党として正式に決めた憲法改正草案とまったく違うものだったからだ。

 9条で「国防軍の保持」を明記した憲法改正草案を強く推す石破茂元幹事長は、「自民党でされてきた議論とは違う」と疑問を呈し(テレ朝news 5月9日)、その後も「あれ(憲法改正草案)をどう取り扱うかが一番大事」「勢いで憲法を改正していいはずは全くない」と改めて主張した(産経新聞 5月11日)。

石破茂元幹事長 ©山田真実/文藝春秋

 船田元衆院議員は「行政の長たる首相には、もう少し慎重であっていただきたかった」と批判(日本経済新聞 5月8日)。ベテラン・伊吹文明元衆院議長も「組織政党として党に話をしておくべきで少し残念だ。総裁であればこそ党のルールは守らなければならない」と苦言を呈している(TBS NEWS 5月9日)。森友学園問題で「首相に対する侮辱」と激昂していた竹下亘国対委員長でさえ、「首相が思ったような日程感で『とんとん』といくとは考えづらい」と首相の想定通りに進めるのは難しいとコメントした(共同通信 5月9日)。

 自衛隊は「合憲化」しなくちゃいけない存在なのか、一度高校授業料無償化を廃止した安倍政権がどうして教育無償化を憲法改正の目的の中に入れているのかなど、あちこちで議論を巻き起こし、ツッコミと批判を浴びた安倍首相の改憲メッセージだが、連休明けの次の発言がさらなる激しいツッコミを浴びたのであった。