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35歳の“素人社長”がベイスターズを黒字化に導いた「順次戦略」と「散弾銃戦略」

35歳の“素人社長”がベイスターズを黒字化に導いた「順次戦略」と「散弾銃戦略」

史上最年少球団社長の「常識を超える」経営術(1)

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ハマスタを全試合満員にする!

――「経営でチームを強くする」という信念で、5年目には球団史上初のクライマックスシリーズに進出し、広島東洋カープとファイナルステージを戦いました。経営者として5年間でどんなビジョンを描いていたのでしょうか。

池田純さん

池田 戦略は2つあります。まずは順次戦略。段階を踏んで課題をクリアしたら、次のステップに進む。2段階、3段階先を見据えながら、順番に目標を達成していくやり方です。私は就任当初、「本拠地ハマスタを全試合満員にすること」「健全経営を実現すること」「優勝争いができるチームをつくること」の3つを目標に掲げ、「5カ年の改革プラン」を作成しました。

 1年目は横浜DeNAベイスターズという組織を把握し、野球界とスポーツビジネスの常識を知り、情報蓄積する一方で、世の中で話題になるような斬新な企画を積極的に発信していきました。2〜3年目は私の武器の1つであるマーケティングを本格的に導入し、戦略ターゲットを30代から40代の働き盛りの男性層「アクティブ・サラリーマン」に定めました。さらに、球団の「革新的」というブランディングの醸成にも力を注ぎました。4年目からはビジネスの拡大期と位置づけ、「コミュニティボールパーク化構想」に基づき、オリジナルビールなど飲食の拡充も進めました。そして5年目には“絶対に無理だ”と言われてきた「横浜スタジアムの買収(友好的TOB)」に成功し、一体経営が実現したのです。

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――では、もうひとつの戦略とは?

池田 散弾銃戦略です。順次戦略が結果を積み上げていく手法だとすれば、散弾銃戦略は、面白いと思ったアイディアやターゲットに向けてランダムに発信し続けていくという発想です。2つの戦略は同時に行なうことが重要で、散弾銃戦略では流れを読みながら、当たりそうな企画を引き当て、順次戦略にも生かしていく。これは、球団経営に限らず、すべてのビジネスやキャリアプランに通じるメソッドだと思います。

――ベイスターズで成功してきた斬新な企画の数々の裏には、芽が出なかったものもたくさんあるのでしょうか。

池田 正直、失敗したこともたくさんありますよ。野球の打者と同様、3割打てば成功なので。極端な話、7割の失敗を気にしていたら、何も生まれてこないでしょう。

池田 純(いけだ じゅん)
1976年1月23日、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事、博報堂を経て、2007年にDeNAに入社。執行役員マーケティングコミュニケーション室長を務める。2010年にNTTドコモとDeNAのジョイントベンチャー、エブリスタの初代社長として事業を立ち上げ、初年度から黒字化。2011年に横浜DeNAベイスターズの社長に史上最年少の35歳で就任。5年間で数々の改革を行ない、売上は倍増、観客動員数は球団史上最多、24億円の赤字から5億円超の黒字化に成功。2016年10月16日、契約満了に伴い、横浜DeNAベイスターズ社長を退任。現在はJリーグ特任理事、日本ラグビーフットボール協会特任理事、明治大学学長特任補佐、複数の企業の社外取締役やアドバイザーを務める一方、Number Sports Business College(NSBC)を開講するなど、いくつもの肩書を持つ実業家として活躍している。


※史上最年少社長が明かす「常識の超え方」2へ続く

35歳の“素人社長”がベイスターズを黒字化に導いた「順次戦略」と「散弾銃戦略」

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