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カンヌ映画祭 どうしてネットフリックスの快挙が「白紙」に戻されてしまったのか?

映像業界の大きな変化と「映画文化」

2017/05/19

genre : エンタメ, 映画

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 いまや複数のオンライン動画サイトがしのぎを削る時代。目的に合わせてHuluやNetflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT等々を利用している方も、最近は多いかと思います。日本では地上波のチャンネルが、番組のオンデマンドを用意している場合も増えました。

 アメリカではストリーミングサイトが、ドラマや映画といった独自コンテンツを制作しており、それらが高い評価を受けているのが、近年の映像業界の大きな変化でしょう。

ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEO ©getty

Amazonプライムでは「もう自分の映画に出ない」ウディ・アレンがドラマを監督・主演

 元々、アメリカではケーブルテレビが独自に質の良いドラマを制作していました。人気が高くて長期シリーズ化しているHBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』(11年~)や、AMCの『ウォーキング・デッド』(10年~)は、日本でも知名度高し。そういった個性的な番組の人気を受けて、アメリカの地上波局であるNBCが、カンヌ映画祭男優賞も受賞しているマッツ・ミケルセンを主演に迎え、『ハンニバル』(13年~)を制作。残酷描写がハンパないのに、簡単に観られるNBCが人喰い博士ハンニバルをドラマ化したのも、「地上波の限界に挑戦」と話題となりました。

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 また、ケーブルテレビやストリーミングサイトの独自制作のドラマは、携わる監督や俳優に、映画界でも著名な人々が参加しているのに目を見張ります。早かったのは、HBOであのマーティン・スコセッシが製作した『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』(10年~)。スコセッシは映像形態にも敏感ですね。またAmazonプライム・ビデオでは、ウディ・アレン本人が監督・主演を務めるドラマ『ウディ・アレンの6つの危ない物語』(16年)が、日本でも今年になって視聴開始になっています。アレンは自分の映画にはもう出演しないのに、ドラマでは主演を張るなんて……。

 昔の感覚では、俳優がテレビ向け作品に出るのは、映画という第一線から脱落した都落ち感がありましたが、今やアカデミー賞俳優のマシュー・マコノヒーや、世界的なスターであるブラッド・ピットまでが、ケーブルテレビやストリーミングサイトの映像作品に主演する時代なのです。

ウディ・アレン ©getty