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 須賀しのぶ『また、桜の国で』は、第2次大戦を在ポーランド日本大使館の外交官の視点で描く。500頁を超える大著だけに、「最後まで読み通せない子もいた」と、ハードルは高かったようだが、

「ロシアの血が入っている主人公がアイデンティティに悩み、あえて『日本人』であろうとする姿に痛々しさと美しさがある。私たちの学校には高校に入るまで日本に住んだことのない帰国子女もいる。そういう子は勿論、そうでなくとも高校生はみんな『自分とは何か』に悩んでいる。普遍的な葛藤を描いた小説だ」

「ユダヤ人差別など、この本に描かれている宗教、民族の問題は、今、世界各地で起こっていることと深くつながっている。タイムリーな作品」

 と、熱い応援演説が続く。

「歴史の話は難しいけど、友情の物語として読めば楽しめる。人間、みんなわかり合える。過酷な現実の中にもしっかりと希望が描かれている」

 との意見には、多くの参加者が頷いていた。

 恩田陸『蜜蜂と遠雷』は第156回直木賞受賞作。国際ピアノコンクールに集う天才たちを描いた青春群像小説だ。

『蜜蜂と遠雷』(恩田 陸 著)

「音の描写が気持ちいい」「登場人物みんなに存在理由があり、それぞれに共感できる。ピアノ演奏の表現によってキャラクターを描きわけているのはすごい文章力」「とにかく面白い。登場人物みんな大好き」と、文章や登場人物の魅力について賛辞が絶えない。

 装幀に注目する生徒が多いのもこの賞の特色だろうか。

「カバーを外したら真っ黒な表紙が現れた。真っ白な本文用紙とのコントラストがきれいで、すぐ黒鍵と白鍵だとわかった。読む前からピアノの世界へと誘われているよう」

 という意見が新鮮だった。