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 ここで2次投票が行われ、賞の行方は、過半数の支持をえた『また、桜の国で』と『蜜蜂と遠雷』の2作に絞られた。「高校生直木賞にふさわしいのはどちらの作品か?」との観点で議論が続く。

「『桜の国』は、差別意識など主人公の負の感情を描いている。『蜜蜂』は天才たちみんなが前向きで眩しくて、あまりにきれいすぎない?」

「私たちの現実にはストレスも多い。せめて小説を読む時くらい楽しい気持ちになりたいから、きれいすぎる世界でかまわない。『蜜蜂』を推す」

「いま高校生が求めているものは“きれいなもの”ではないか。私も『蜜蜂』がいい」

「『桜の国』は厚いし、戦争だし、読書が苦手な人は読めないのでは? 全ての高校生に薦めることはできないよ」

「私は『蜜蜂』派だったが、議論しているうちに、『桜の国』こそ後の世代に伝えていくべき本ではないかと思うようになった。読んで面白い本と、読後、印象に残る本は違う」

「読書は勉強ではない。読書は休息の地であってほしいから、私は『蜜蜂』を推す」

「『蜜蜂』はすでに多くの人に読まれている。今更、賞に推さなくても……」

「面白いものは面白い。読んで面白い本を選ぶべきだよ」

「人に薦めて喜ばれるのは『蜜蜂』だ。『桜の国』は読んでもらえるかどうかさえ自信がない。でも、自分が薦めて、読んでもらえて、その誰かの胸に残ってくれた時、本当に嬉しいのは『桜の国』かな」

 ここで決選投票が行われ、冒頭で紹介した通り、『また、桜の国で』が受賞と決した。

 結論が出た後も、会場のあちこちで高校生たちの“感想戦”が続く。「高校生直木賞らしさ」というものがあるとすれば、それは読後、感想を誰かと語りあう楽しさまで含めて本の魅力である、とする価値観ではないかと感じた。読んだ「その先」も、彼らにとっては大切な読書なのだ。

「高校生にとって『また、桜の国で』は非常に歯ごたえのある本だったはずですが、読んだ直後はよくわからなくても、他人の意見に耳を傾け、また自分の意見を他人に伝えようと懸命に考える中で、しだいにその魅力がわかってくるということがある。議論を大事にする本賞らしい“逆転劇”だったのではないでしょうか」(前出・伊藤氏)

激論を戦わせる全21校の代表者たち

『また、桜の国で』
1938年10月、外務書記生の棚倉慎はワルシャワの在ポーランド日本大使館に着任した。先の大戦からわずか20年。世界は平和を求めていたが、ヒトラー率いるナチス・ドイツが遂にポーランドへと侵攻を開始、戦争が勃発する。

高校生直木賞の詳細は、http://koukouseinaoki.com

賞への参加、賛助会員に関する問合せは、info@koukouseinaoki.com(高校生直木賞実行委員会)まで