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連載池上さんに聞いてみた。

池上さん、オバマ大統領は引退後どのような生活を送るのですか?

池上さん、オバマ大統領は引退後どのような生活を送るのですか?

池上さんに聞いてみた。

2017/05/23
note

Q オバマ大統領は、引退後どのような生活を送るのでしょうか。(24歳・男・会社員)

©iStock.com

A アメリカの大統領は引退後に稼ぐ。こんな言葉があります。

 オバマ前大統領が今年9月のウォール街の投資銀行での講演を引き受けたのですが、その講演料が40万ドル(日本円で約4500万円)だとわかって話題になっています。

 アメリカの大統領の年間報酬も40万ドル。日本の総理大臣の年間報酬が4000万円弱ですから、それよりは高いですが、世界一の大国のリーダーとしては、それほど高額ではないとも言えるでしょう。

 大統領退任後は毎年20万ドルの年金の支給を受けます。それなりの安定した生活が保障されています。

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 ただし、それだけではありません。いったん大統領職を降りると、「講演してほしい」というオファーが殺到します。1回につき数千万円の講演会をいくつか受けていれば、年間の所得は数億円以上になるでしょう。

 また、これとは別に、歴代の大統領は回顧録を執筆して出版します。この出版権が、クリントンのときは1500万ドル、ジョージ・W・ブッシュが1000万ドルでした。

 今回はアメリカの大手出版社・ペンギンランダムハウス社がオバマ氏とミシェル夫人の2人の回顧録の世界出版権を6500万ドル(約72億円)で獲得しました。

 ただ、こうした資金は自分のポケットに入るのではなく、独自の財団を設立して、そこの収入にする方法が一般的です。大統領を退任すると、それぞれ「大統領ライブラリー」を設立します。その設立費用や運営費用に充てるのです。

 大統領が回顧録を出すのはいいことです。在任中何があったのか、多くの人が知ることができるからです。

 日本の総理大臣経験者が回顧録を出すことは滅多にありません。あっても自己弁護に近い内容だったりします。アメリカ大統領の回顧録も、自分に都合のいいことが書かれてはいますが、後世のためにきちんとした記録を残そうという意思は明確です。未来の大統領のために、過去の記録を残しておく。これが大統領あるいは政治家の歴史的責任でしょう。

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