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木村 正人
2017/05/27

トランプ初の外遊 “9日間の中東地雷原ツアー”は吉と出るか?

「ロシアゲート」疑惑でフリン大統領補佐官辞任、疑惑を捜査していたコミーFBI長官解任、特別検察官の設置、と国内で「ローラーコースター政局」が続くトランプ大統領は、19日から初外遊に出た。21日にはサウジアラビアで、オバマ前大統領の「カイロ演説」を意識した「リヤド演説」を行い、イスラム55カ国の首脳を前に「信仰の違い、宗派の違い、文明の違いによる戦いじゃない。正義と悪の戦いだ」とテロ対策への協力を呼びかけた。

 米大統領の初外遊は近隣のカナダかメキシコで慣らし運転するのが常道だが、今回は、サウジアラビア、イスラエル、パレスチナ自治区、さらにはバチカンでローマ法王フランシスコにも面会する。イラン核合意、シリア内戦、「イスラム国(IS)」掃討など問題山積の中東をいきなり訪れるのは「9日間の地雷原ツアー」とも評される。

サウジアラビアを訪れたトランプ大統領 ©共同通信社

 選挙期間中、NATOを「時代遅れ」とこき下ろし、イスラム教徒の入国禁止を叫んだトランプにとって、中東や欧州の同盟国を安心させることは、喫緊の課題となっていた。英国の元EU外相特別顧問は「スタッフ任せにした結果とは言え、心配していたほどトランプ外交は悪くない」と胸をなで下ろす。

 外遊先の選定も含めて、トランプ外交に安定感を与えているのはフリンの後任マクマスターと国防長官マティス。軍人上がりの2人をトランプに繋いだのは娘婿のクシュナーで、危険なナショナリズムをまき散らす首席戦略官バノンを遠ざけている。元米外交官でシンクタンク、国際戦略研究所アメリカ本部長のマーク・フィッツパトリックは、こう指摘する。

「マクマスターとマティスらは代替案なしにイラン核合意を破棄することの危険性を認識しており、トランプ政権の対イラン政策は、実はオバマ時代と大差はない」

 ではバノンは、本当に影響力を失いつつあるのか。

「そう結論づけるのは早計だ。現にリヤド演説を書いたのはバノンの側近。バノンが諸悪の根源ではない。問題はトランプ自身にある」(同前)

 その場になるまで、何を言い出すかわからないトランプが、地雷を踏まずに初外遊から“帰還”できる保証はない。

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