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【日本ハム】「4割打者・近藤健介」について考えているうちに台湾に飛んでいた

文春野球コラム ペナントレース2017

近藤健介と「4割打者」をどう結びつけるか

 スポーツメディアが「4割打者・近藤健介」をあい次いで取り上げ始めた。5月も終わりになるのにコンスケの打率が落ちないのだ。5月23日現在、4割2分を依然キープしている。もちろんパの打率部門1位だ。いや、2位ソフトバンク・内川聖一(.350)、3位西武・浅村栄斗(.339)だってめちゃくちゃ打ってるというのにその上を行っている。ファイターズは開幕以来、チームが低迷してるから、スポーツ紙の「打撃30傑」のいちばん上にコンスケが載っているのが心の支えだ。

 が、「4割達成可能か?」を論じられるのも大変だろうなぁと思う。5月21日のオリックス戦ではついに4打席連続四球(しかもノースイング!)という事態に至った。ちなみに打率4割維持の球団記録は1973年の張本勲、46試合だそうだ。これは更新がかなり現実味を帯びてきた(本稿執筆現在、42試合維持)。

 NPB記録は1989年のクロマティ(巨人)の96試合である。クロマティは遠くかすんで見えないなぁ。その89年クロマティですら3割7分8厘でシーズンを終えているのだ。「4割打者」のハードルがいかに高いか。NPBシーズン最高打率は、もちろん1986年バース(阪神)の3割8分9厘だ。コンスケはイチローすら到達し得なかった高みを目指す「挑戦者」として持ち上げられている。

5月23日現在、リーグトップの打率.420をマークしている近藤健介 ©文藝春秋

 ファンとして正直な気持ちを申せば、無茶言うなよ、である。大変誇らしく光栄なことではあるけれど、そうやって重圧かけられてもロクなことにならない。そっとしといてやってほしい。そっとしといてくれたら案外、誰にも気づかれず4割残すかも。まぁ、それは無理な相談かなぁ。ヒザが悪くて苦しんだ去年を見ている立場からすると、万全の体調で野球やってくれてるだけで嬉しいのだ。第一、本人の口から「シーズン4割を目指します」なんて一度も聞いてない。

 僕は「4割打者」と「近藤健介」を自分のなかでどう落とし込んだらいいか考え込んだ。本音はあくまで「無茶言うなよ」だが、それはそれでコンスケの可能性にフタをすることになる気もする。そんなこと言ったらファイターズ自体が「無茶言うなよ」の連続だ。「北海道移転」だって「これからはパ・リーグです!」だって、もちろん「二刀流」だって無茶そのものだ。

 問題は「4割打者」像がうまく結べないのだった。見たことないしなぁ。イメージ上の「4割打者」はタイ・カッブだ。タイ・カッブは嫌われ者だったらしい。記録への執念が常軌を逸していた。勝つためには手段を選ばない。ダグアウトでわざと見えるようにスパイクの歯を研いで、殺人スライディングを印象づけたのは有名な逸話だ。眼が悪くなるとして、現役の間、一本も映画を見なかった。近藤健介はそんな極端な人間じゃないもんなぁと思うのだ。愛称も「コンスケ」とか「コンちゃん」だ。親しみやすい。ちょっと対極ではないか。

 と、そこまで考えてタイガーエアに乗って台湾へ飛んだ。それなら実際の「4割打者」をこの目で見て来ればいい。Lamigoモンキーズの背番号9、王柏融がいるじゃないか。

CPBL新時代に君臨する「大王」

 王柏融は23歳、大卒3年目の外野手。181センチ90キロと体格にも恵まれ、2年目の昨シーズンは打率.414、200本安打のCPBL新記録を達成。MVP、新人王、首位打者等のタイトルを総ナメにした。今年のWBC壮行試合には台湾代表として出場、則本昂大(楽天)からバックスクリーン直撃の2ランを放っている(本大会には不出場)。今シーズンも4割を打ち、首位のLamigoモンキーズをけん引している。これまで複数のNPB球団がスカウトを派遣していると聞く。

 Lamigoの本拠地、桃園市は台北市の西隣りに位置する。スタジアム、桃園国際棒球場は今年、完成されたばかりの桃園メトロで「桃園体育園区」駅下車すぐ。礒江厚綺さんという日本人の広報担当が日本語公式ツイッターやフェイスブックを充実させてくださってるので、旅行者も情報入手が容易だ。また桃園メトロは現在、Lamigoモンキーズ観戦帰りの乗車無料サービス(チケット半券と乗車証を見せる)を実施していて、非常におトク感がある。

 CPBL(中華職棒=台湾のプロ野球団体)は初めて見に行った。Lamigoモンキーズの前身は2006年、ファイターズがアジアシリーズで戦った「La Newベアーズ」だ。あのときも「球迷」(中国語で野球ファンの意)と呼ばれる熱心なファンが東京ドームに押しかけた。ごきげんな奴らだった。僕らハムファンは水道橋の居酒屋で大いに歓待したものだ。その後、台湾球界は八百長騒動に揺れ、低迷期に入る。そして、ようやくその低迷を突破する勢いを見せているのがLamigoの人気爆発だ。

 王柏融のバッティングはWBC壮行試合でも見て、今はネットに映像も上がってるからイメージがあった。台湾球界らしいハードヒッターだ。打席の印象は岩村明憲っぽい。まぁ、方向性としては柳田悠岐(ソフトバンク)か。面白いことにLamigoはユニホームに名前と背番号だけじゃなく「愛称」がついている。王柏融は「柏融大王」(ボーロンダーワン。名前の「王」から転じた)。CPBL新時代に君臨する「大王」というわけだ。

「柏融大王」の愛称が書かれている王柏融のグッズ ©えのきどいちろう

 試合は21日の富邦戦だった。前日、「大王」は300本目となるヒットを放ち、CPBL史上最速300本安打記録を塗り替えている。開幕以来、4割2分台をキープしているのは我が近藤健介と同じだが、この日はあいにく当たりがなかった。コンスケもそうだけど、4割打ってると3打数1安打でも打率が下がってしまうのだ。とんでもない話だ。

 まぁ、「大王」のクリーンヒットが見たかったが、バッティングの感じはよくわかった。第1打席、センターフェンス際まで運んだ大飛球もバットが押し込めていた。スケールの大きなバッターだ。センター中心に弾き返す印象だが、押し込む技術が身につけばもっとホームランが増えるだろう。

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