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山岸 俊男
2017/06/16

日本人よ、「びくびく」生きるのはもうやめよう

ここまでわかった心の正体

周囲の目を気にし、仲間だけを信頼する社会を変えるべきときが来ている

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 日本文化は和の文化である。日本人は和を大切にする。和の心こそが日本人の美徳であり誇りである。昨今テレビや新聞などのメディアを賑わせているテーマの一つが、こうした日本人の和の心礼賛論である。それでは、誰もが当然と思っている日本人の和の心とは何だろう? 日本人が大切にする和とはいったい何を意味しているのだろう?

 そこでまず、日本人がほかの国の国民よりも本当に和を大切にしているのかを、筆者たちが世界の21か国で実施した調査で調べてみた。「私はまわりの人との間で和をたもつことを大切にしている(英語では“I value maintaining harmony with others”)」という質問に対してどの程度同意するかを比べてみると、驚くことに日本人の平均は21か国の中で下から4番目、日本人よりも平均が低いのはエストニア、トルコ、韓国だけである。

 これは質問の仕方が悪かったのかもしれないと思い、次に、他人の気持ちを大切にするという和の側面を強調した、「まわりの人の気持ちを尊重するようにしている(英語では“I try to respect the feelings of others”)」という質問に対する平均を比べてみたところ、ここでもまた日本人の平均は21か国中の最低である。さらにしつこく「いつもまわりの人の立場にたって物事を考えるようにしている(“I always try to see things from other people's perspectives”)」という質問に対する回答を比べてみても、日本人の平均は下から2番目で、日本人よりも平均が低いのはロシアだけであった。

 和の心を、他人の気持ちを慮(おもんぱか)り、他人の立場に立って協調的な関係を作ろうとする心だとすれば、どうも日本人には和の心が欠けているように思われる。少なくともこの調査に回答をしてくれた日本人は、自分は和の心をもっているとは思っていないようである。

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 そこで少し見方を変え、和のもう一つの側面である「波風を立てない」ように「まわりに合わせる」という点に目を向けてみた。すると、「まわりの人からきらわれないようにふるまうことがよくある(英語では“I often behave in a way that will keep others from disliking me”)」という質問に対する日本人の平均は上から8番目、「まわりの人が自分をどう思っているかが、つい気になる(“I often find myself being concerned about what others think of me”)」に対する回答の平均は10番目、「まわりの人がどう思うかが気になって、自分のしたいことをそのままできないことがある(“I sometimes get so anxious about what other people might think that I am prevented from doing what I really want to do”)」の平均は7番目で、21か国中の中の上に位置している。ちなみにこれら3つの質問に一貫して高い回答を示しているのは、中国、韓国、インドなどの国々である。

 どうやら日本人の和の心とは、他人の気持ちになって互いに協調しあう関係を好むというよりは、まわりからどう思われるかを気にして、まわりとの間で波風を立てないようにビクビクしている気持ちのようである。ただしそうした気持ちも、一人一人が実際にそう思っているというよりは、日本人はそうなのだとみなが思い込んでいるということのようだ。

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