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池田 浩明
2017/06/04

意外! サラリーマンが集う焼き鳥屋が美味しいパンを出すらしい

各駅停車パンの旅 品川駅編

 有楽町の交通会館、新橋のニュー新橋ビル……東京の東側の駅がどこもそうであるように、品川駅前にも昭和な地下飲食街がある。駅近の立地なのに安くて旨い店が並んで、会社帰りのサラリーマンの憩いの場所になっている。

青木良文さん

 品川駅前にある秀和品川ビルの地下、「鳥てる」もそんな一軒。焼き鳥9本コース3400円(税別)がコスパ抜群。肉がものすごくでかいのだ。焼き鳥なのに、ステーキみたいに肉をがしがし噛み破る快感がある。大きいだけに風味も閉じ込められている。最高の焼き加減ともあいまって、表面がしっかり焼き締められて香ばしいのに、中からじゅるじゅると肉の旨味が流れ出してくる。外かり中じゅるは、おいしいパンと共通した特徴。この道25年の職人、青木良文さんは言う。

「口いっぱいにほおばって、むしゃむしゃ咀嚼するのが、僕の考える焼き鳥。焼き加減は勘としか言いようがない。部位によってぜんぶ変わってきます。脂が強い皮やぼんじりは焦げができるぐらい焼いてかりっとおいしく。ささみやレバーは表面だけさっと焼いてレア気味に」

愛しの砂肝
ぷにゅぷにゅのレバー
汁まみれのつくね

 なぜパン連載で焼き鳥の話をしているのか。9本目を終了したあとのエクストラステージがなんとパン。締めの「焼き鳥ドッグ」(要予約)が登場するのだ。

 ご主人が炭火でコッペパンを焼きはじめると肉の匂いに混じって香ばしい麦の焼ける香りが漂う。並行してもも肉を焼く。肉質のやわらかい上ももの部分。しょうゆと熊本産の赤酒を混ぜただけ、砂糖を加えないタレに漬けられる。パンが焼けると切り込みを入れられ、レタスとももの焼き鳥を合体させる。

いまや遅しと食べられるのを待つもも正肉
焼き鳥ドッグ製作中

 焼き鳥屋の焼き鳥ドッグはどんな味か。もも肉のなんとやわらかいことよ。勢いよく振り下ろされる上前歯の鉄槌に、ふにふにと身をよじらせながらまっぷたつに千切れると、ちょちょぎれる肉汁。と、間もなく、肉の下に敷かれたマヨネーズ(もろみ味噌をブレンドするひと手間)をちゅるんと舌に感じ、肉をやわらかな甘さで彩るタレとそれは一体になり、照り焼きハンバーガー的な甘じょっぱマリアージュの虜になる。