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連載THIS WEEK

池袋ラブホテル心中未遂事件
死亡女性は末期がんだった?

source : 週刊文春 2016年7月7日号

genre : ニュース, 社会

現場は池袋駅から北へ約500メートル(写真は駅北口周辺)
Photo:Kyodo

 ともに生きることを誓うのが結婚なら、ともに死ぬことを誓うのは心中だ。過去、数々の男女や家族が心中を試み、その悲劇性は「曽根崎心中」などの文学作品まで生み出した。6月8日、また一つ悲しい心中未遂事件が池袋で起きていた。

 社会部記者が解説する。

「午後6時20分ごろ、池袋のラブホテルの一室のベッドの上に、胸を刃物で刺された山口美賀(みか)さん(46)の遺体と、胸に傷を負って血だらけになった、夫で無職の山口輝武(てるたけ)容疑者(33)が横になっているのをホテルの従業員が見つけて通報しました。輝武容疑者の傍らには血の付いた包丁が落ちていました。美賀さんの同意があったかは不明ですが、警察は6月27日、輝武容疑者が妻を殺害し、自殺を図ったとして、殺人容疑で通常逮捕しました。前日夜から2人がずっとチェックアウトしないのを不審に思った従業員が状況を確かめに部屋に入り、発見したそうです」

 現場はJR池袋駅北口のラブホテル街の一角。これだけならよくある話といえるかもしれないが、まだ続きがある。

「警察が遺体の状態を調べたところ、美賀さんは髪がほとんど抜け落ちた上に、オムツをしていたのが分かりました。末期がんだったようで、輝武容疑者は『病気で苦しむ妻を楽にしてあげたかった』と供述しているようです」(同前)

 ホテルの部屋には輝武容疑者の遺言も残されていた。

「テーブルの上にノートがあり、〈美賀ちゃんを楽にさせてあげました〉〈僕も後を追います〉と書かれていました。山口は妻の左胸部にナイフを数回突き刺して殺害したが、自分は死にきれなかったようです。殺人罪ではありますが、最期の場所としてラブホテルを選んだのも、治療に生活費をつぎ込んで困窮していたのか? などと悲しい想像をめぐらせてしまいます」(同前)

 がんは若ければ若いほど進行が早い。また、若ければ若いほど、検査を受けることも少なく発見が遅れがちだ。発見したときには末期ということも珍しくはない。投薬が増えれば意識も朦朧となる。治療方法が発達したとはいえ、がんがいまだに死に直結する病であることに変わりはない。

 この世の名残、夜も名残。発見されるまでの1日弱を、男女はどんな言葉を交わして過ごしたのか――。

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