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「森のくまさん」のおかげで御用 宝飾品強盗犯のまぬけな逮捕劇

ツキノワグマは表彰モノ(写真はイメージ) ©共同通信社

 スタコラサッサと強盗犯が山林に逃げ込んだところ、熊に出くわし、捜査員と挟み撃ちに――。栃木県内で本当に起きた逮捕劇である。

 事件は5月23日午後2時50分頃、宇都宮市内の5階建てビルで発生した。

「3階の住宅部分の玄関から18~22歳の男3人が押し入り、住人にバールを見せて『金庫を出せ』などと脅した。男たちに押し倒されるなどしてこの家の女性(75)と、一緒にいた長男(50)が負傷しました」(地元記者)

 男たちは、ルビーやダイヤなど660万円相当の宝飾品が入った金庫などを強奪。春日部ナンバーの白いセダンタイプのレクサスで逃げた。

「犯人たちは、被害者の家にあらかじめ金庫があるとわかって襲ったと考えられます。逃走車両も盗難車の可能性が高い。プロの犯行と思われる一方、被害者を拘束するなど時間稼ぎをしておらず、お粗末な面もあります」(同前)

 実際、逃走車両は長男に花瓶を投げつけられ、リアガラスを大破させられている。これが恰好の目印になった。県警は車両に加え、ヘリも投入して約2時間追跡。犯人は日光地区の山中へ逃げ込んだ。

「山肌に沿ってカーブが続く国道を群馬県境近くまで行くと、足尾トンネルがある。ヘリの追尾をかわすため、犯人たちはトンネル内で車両を乗り捨て、脇の林道から崖を登り始めました」(別の地元記者)

 崖の中腹に差し掛かった時だった。崖下からは、すでに約20人の捜査員が迫っていた。そのうちの1人が「熊がいるぞ」と叫んだのだ。

「崖は急峻で、犯人たちは、崖の山側から現れ、自分たちの頭上にいる熊の存在に気づいていなかった可能性がある。捜査員たちは3人を熊から守ろうと必死で叫びました。大人数の人間に驚いたのか、熊はその場からいなくなりましたが、3人は崖の中腹で固まっていたそうです」(同前)

 警察との“連携プレー”を演じた熊は、ツキノワグマとみられ、捜査員によると体長180センチはあったという。地元猟友会メンバーが語る。

「この地域は熊たちのテリトリーで、数十頭は生息していると考えられる。我々も1人では足を踏み入れません」

 実際の熊は「お逃げなさい」とは言わない。命あっての物種だと強盗犯も今頃、檻の中で反省しているだろう。

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