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W杯最年長表彰台記録を更新
“レジェンド”葛西が凄い訳

source : 週刊文春 2016年2月25日号

genre : エンタメ, スポーツ

ブログのタイトルは「神風ジャンパーの挑戦」
Photo:Jiji

「驚異的ですよ。43歳という年齢でありながら、未だに日本のジャンプ界の第一人者として国際舞台で戦っている。しかも、そこで成果を出し続けているわけですからね」(スポーツ紙デスク)

 葛西紀明が12日に行われたジャンプ男子W杯個人第17戦で3位に入り、これで3戦連続の3位となった。自身の持つW杯最年長表彰台記録を更新した。葛西の表彰台は今季4度目で通算60度目。“レジェンド”と呼ばれる彼は何が凄いのか。4歳年上で、かつて共に日の丸を背負って飛んでいた原田雅彦雪印メグミルクスキー部監督に聞いた。

「元々彼は中学生の頃から、僕ら社会人と一緒に飛んでも一番飛んでしまうほど超人的な身体能力の持ち主だったんですよ。それをさらに鍛えて、ジャンプのための身体を作り上げていった。同時に若い頃から国際舞台で世界レベルの選手と切磋琢磨して技術と精神力を磨き、大舞台での経験を積むことで調整の仕方などにも優れたジャンパーになっていったんです」

 気になるのは43歳という年齢になりながら第一線で活躍できる理由だ。原田氏は「ルールの変更など、様々な変化に対応する力が凄い」と語る。また、五輪担当のベテラン記者はこう解説する。

「葛西は最初の所属先が廃部となり、次の所属先もダメになった。アマチュアの選手としては危機的状況ですが、そこで今所属している土屋ホームの当時の社長に出会い、人柄や実力を高く評価してもらった。『最後まで面倒を見る。ボロボロになるまで、お前が納得するまでやれ』と言われたそうです。ここまで惚れ込んで貰えるアスリートはなかなかいない。競技の環境が安定したのも大きかった」

 それにしても、1972年の札幌五輪では70m級でメダルを独占、98年の長野五輪でもラージヒル団体で金を獲り、“日の丸飛行隊”と称されていたが、葛西以外の選手たちはどうしているのか。

「日本ジャンプ陣全体のことを考えると微妙な話ですが、若い選手は『葛西さんは凄い』と見上げていて、勝負する以前に負けてしまっているのが現実です……。国内には彼にプレッシャーを与える存在がいないから、自信満々に飛んでいるんですよ」(同前)

 レジェンド葛西の天下は、まだしばらく続きそうだ。