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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/06/07

東海地方発のボーイズアイドル マジックプリンスの「ありそうでなかった音」――近田春夫の考えるヒット

『UPDATE』(MAG!C★PRINCE)/『始まりのホイッスル』(#ハッシュタグ)

©絵=安斎肇

 どうやら名古屋が熱いらしい。いやなに、地方(って差別用語じゃないですよね?)在住男性アイドルグループの時代、遂に到来か? という話である。

 彼の地では、去年この欄で楽曲について触れたこともあるBOYS AND MENの後を追う形で、数組が全国区ブレークを目指して、まさにしのぎを削っている最中なのだそうな。そして――送られてきた資料によれば――そうした後発の筆頭といっていいのが、MAG!C★PRINCEを名乗るこの5人の若者達とのこと。なるほど確かにジャケットの写真を見れば、全員いかにも今時の女子受けしそうな――ダントツ人気は中央に写る西岡健吾とのこと――佇まいだ。が、そのようなことは俺にはどーでもいい。私の好奇心の向かう先は最新シングル『UPDATE』の出来である。

UPDATE/MAG!C★PRINCE(ユニバーサル)東海地方出身者で2015年に結成。ワタナベエンターテインメント所属のボーイズアイドル。

 曲調はゆったりめのダンスものといったところか。イントロから透明感溢れる“胸キュン”な音の作りゆえ、クラブDJなどの仕事用としては、いささかヤバさに欠けるかも。

 だがしかし、そんな、羽目を外さぬ優等生的なサウンドプロダクションも彼らの声質とは相性バッチリだ。

 あるいはオートチューンのようなエフェクトをさり気なくかけているからなのか、元来のものなのか、いずれにせよ、なかなか表情のあるハモりも美しく決まったハイトーンのボーカルがバックトラックと一体となって醸し出される雰囲気は、ジャニーズ系ともエグザイル系とも、そしてw-inds.などとも違う。あえて申すなら、韓流の男性的な部分をうんと薄めたような印象であろうか、これはありそうでなかった音な気もする。

 そんな、堂にいった声の持ち味の活かしっぷりなどから、おそらくこれは領域的にはプロデュースの仕事だろう。聴くほどに曲の書き手のことに興味が湧いてしまい調べてみると、詞曲アレンジ全て同一人物が担当していること、さらにはそれがこれまでにも相当数の大ヒットをものしてきた経歴の音楽家だともわかり、自身の不勉強ぶりを恥じ入った次第ではあったが、ヒロイズムなるその人の名を知ることが出来たのは大収穫。

 ただひとつ残念だったこともあった。それはこのプロデューサーの本拠地なのだけれど――検索によれば――名古屋ではなく全然(ってホントは全然間違った使い方(笑)です。念のため)東京なのだ。

 なんだ! 結局肝心なところはしっかりお江戸の先生にお願いしちゃってるっていうか振っちゃってるっていうか。

 このケースに限らず、女の子にしろ、首都以外を拠点とするアイドルも、昨今はかなりの数にのぼるようだけれど、では作品のイニシアティブを最終的に握っているのはどこに住む誰なのか? そのあたり、東京に距離を置くプロデューサー方には今少しの奮起を促したい。たのんます。

始まりのホイッスル/#ハッシュタグ(FORM JAPAN)2016年デビュー。名古屋の芸能事務所所属の地域密着型ボーイズアイドル。

 #ハッシュタグ。

 これも名古屋である。まだ色々な意味で方向がちょい定まっていない感じがしました。

今週の真贋「ついに千回をむかえたこのコラム。タイトルは小林秀雄の“考えるヒント”のパクリなんだけどさ、かつてその小林秀雄は青山二郎に“魚を釣らず、釣る手付きを見せてるだけ”、お前さんのは中身はないって絡まれたそうだね」と近田春夫氏。「オレもますますその芸を極めていきたいと思ってますんで、これからもよろしくお願いします!」

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