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【オリックス】DHの存在 セはビートルズ、パはストーンズ?

交流戦 指名対決 テーマ「DHのミカタ」 文春野球コラム ペナントレース2017

2017/06/03
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通算成績に(そこまで)大きな差は開いていないセ・パ交流戦

 Bsが苦戦を続けた5月の下旬。文春野球コラムのコミッショナーから一通のメールを貰った。「セ・パ交流戦についてのルール」と、「対戦希望の球団」と、「対戦したい話題」についてだと言う。

「対戦希望の球団」について色々と考えを巡らすも、それはやはり期間と出稿数の兼ね合いがあるもの。ここは「対戦したい話題」に重きを置いて交流戦を戦いたいと思う。

 ところで、過去から「パ・リーグ優位」のイメージが強いセ・パ交流戦。実は通算成績に(そこまで)大きな差は開いていない。過去12年でパ・リーグの925勝821敗54分。1年当たりに換算するとセ・リーグ全体で約8敗、セ・リーグ各チームが毎年1敗強負け越している程度の計算だ。では何故ここまで「パ・リーグ優位」との印象が先行するのだろう。それは恐らく「DH」の存在によるものが大きいのではないだろうか。

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 全員が楽器を演奏しながら歌を歌うビートルズに対して、ミック・ジャガーが持っているのはマイクだけ。例えるならセ・リーグがビートルズでパ・リーグがローリング・ストーンズ。ポールよりミックの方がどれだけ歌に専念出来る事か。言わばDHとはバンドで言う所のヴォーカリストの役割であると言っていいだろう。自分がベースを弾きながら歌を歌うMEGASTOPPERはセ・リーグだったのか。そうだったのか……。

 せっかくの交流戦の機会。まずはここで一度バンドのヴォーカリスト、いやいやDH制度についておさらいをしてみるのはどうだろう。という事で今回の「対戦したい話題」はDHについて。死亡遊戯さん宜しくお願い致します。

04〜05年は巨人、07〜09年はオリックスに在籍していたタフィ・ローズ ©文藝春秋

実は奥深いDH制度

 まずDHに関するルールであるが、(1)DHは投手以外には使用出来ない。(2)相手投手が降板しない限り、最低1打席消化するまでは交代出来ない。(3)DHの選手が守備についた場合、DHは消滅する。ざっくり言えばこのくらいであろうか。

(1)はDH「designated hitter」とDP「designated player」の違いに由来する。DHの場合は投手のみ、DPの場合は好きなポジションを指定して守備に就ける。「誰かの代わりに打席に立つ」というより、「代わりに誰かが守備に就いてくれる」と考えれば良いだろう。DHの場合は投手以外の選手が代わって守る事が出来ないのである。

(2)は予告先発になってからは使う必要が無くなった「偵察要員」、これにDHは使えないという事だ。2011年交流戦、広島対オリックスにおいて広島・野村謙二郎監督は7番DHに今村猛投手を起用。「偵察要員」のつもりであったと思うが、オリックス・岡田彰布監督がこのルールを指摘。メンバー表の交換時に指摘されたという野村監督は「完全なボーンヘッド」と語ったが、DHに不慣れなセ・リーグの監督にはいささかかわいそうな結果となった。

(3)はいわゆる「DH解除」というヤツだ。近年「DH解除」と言えば大谷翔平投手(日ハム)の代名詞となっているが、Bsも過去に「DH解除」を行った事例がある。これまた岡田監督時代の2010年、対ソフトバンク戦。6回の攻撃時にスタメンマスクの鈴木郁洋捕手に代打を送り、直後の7回からDH起用の日高剛選手を捕手に回した。その結果DHは消滅し、岸田護投手が8番打者に入るという珍展開に至ったのだ。継投の後、投手の打席で代打バルディリスが告げられたため投手が打席に立つ事はなかったが、ルールを熟知した岡田監督の見事な采配であった。

 このDH制度。パ・リーグ野球ではもはや当たり前のルールとなっているが知れば知るほど案外奥が深い。パ・リーグペナントレースでは遭遇しなくても、このセ・パ交流戦では様々な事が巻き起こる。「DHのミカタ」これがセ・パ交流戦のひとつの醍醐味なのではないだろうか。

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