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伊達 久
2017/06/11

ぎっくり腰の痛みが注射1本で消える――痛み専門「ペインクリニック」とは何か

身近な病気を治すスーパー開業医

source : 文藝春秋 2016年5月号

genre : ライフ, 医療

 腰痛、肩こり、関節痛、頭痛、神経痛など、しつこい痛みに悩まされている人には、痛みの緩和を専門とする「ペインクリニック」という選択肢もある。リハビリ室や手術室、入院施設なども備え、大学病院に匹敵する専門治療ができる仙台ペインクリニックの伊達医師が、専門医ならではの治療を解説する。

ぎっくり腰になっても次の日から仕事ができる

「ペインクリニック」という言葉はまだ馴染みがうすいと思います。

 いろんな医療機関を回ったのに痛みから解放されず、苦しんでいる人に対して、神経ブロック注射や薬物療法、心理療法など様々な治療法を駆使して、痛みを和らげるのが私たちの役割です。

 当院を受診される人で多いのは腰痛の患者さんで、全体の約4割を占めます。肩こり、肩やひざなど関節の痛み、手足のしびれなどの患者さんもよく来られます。また、このような整形外科的な疾患以外で多いのが、頭痛や顔面(三叉)神経痛、帯状疱疹後神経痛などです。他に、ケガや病気がきっかけで強い痛みが続く「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」や、全身に痛みが出る「線維筋痛症」など、様々な痛みに苦しむ患者さんが来られます。

 これらの痛みは原因不明のことも多く、治療しても中々よくならないので、診てもらえる医療機関があまりありません。ペインクリニックでは、そのような患者さんでも粘り強く治療します。

 ペインクリニックの専門医はもともと麻酔科出身が多く、神経に直接的に麻酔薬を注射する神経ブロック注射が得意です。あまり知られていませんが、この注射で劇的な効果を得られる疾患の1つが急性腰痛、いわゆる「ぎっくり腰」です。

 整形外科で飲み薬をもらったのに痛みがあまり取れず、数日間動けなくて困ったという経験のある人もいるのではないでしょうか。ですが、ぎっくり腰は炎症を起こしている腰骨の関節(椎間関節)に直接注射すれば、ほとんどの人はすぐに痛みが和らぎ、次の日から仕事ができるようになります。椎間関節に注射を打つのは難しいのですが、ペインクリニックの専門医なら打ってくれるはずです。

 神経ブロック注射は慢性腰痛にも効果的です。慢性腰痛の85%は、原因のわからない「非特異的腰痛」と診断されています。しかし、神経ブロック注射を打って、効けばそこが痛みの発生源だとわかりますし、効かなければそこではないとわかります。痛みの出方や治療効果、画像などを詳しく調べることで、原因が特定できることも多いのです。

神経ブロック注射をすれば、ぎっくり腰になっても次の日から仕事ができる(画像はイメージです) ©iStock.com

 この神経ブロック注射は、帯状疱疹後の神経痛にも効果的です。子どもの頃に感染して、神経節の中に潜伏していた水ぼうそうのウイルスが、体力低下や加齢を引き金に動き出し、皮膚に帯状の発疹をつくるのが帯状疱疹です。通常、抗ウイルス薬や抗炎症鎮痛薬を投与しますが、このときにしっかり痛みを取らないと、痛みが慢性化してしまう場合があります。炎症によって血流が途絶え、神経が変性し、痛みに過敏になってしまうのです。これが帯状疱疹後神経痛です。

 こうなる前に神経ブロック注射をすれば、強制的に血の流れをよくして、神経の変性や痛みの慢性化を阻止することができます。ですから、帯状疱疹で薬を飲んでいるのに、発症後2週間経っても痛みが取れない場合は、ぜひペインクリニックを受診してみてください。

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