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連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/08/18

地銀が戦々恐々
金融庁は人呼んで森ヨットスクール

source : 週刊文春 2016年8月25日号

genre : ニュース, 政治, 経済

理系出身の森長官
Photo:Kyodo

「金融処分庁から金融育成庁への転換の流れを一過性のものではなく、今後、(金融庁の)幹部が代わっても、それが後戻りしないようにする」

 7月中旬、居並ぶ地域銀行トップの面々を前にこう宣言したのが、金融庁の森信親長官だ。マイナス金利と並ぶ銀行界のホットイシューが、森氏の一挙手一投足だ。

「旧大蔵省時代から銀行局課長補佐として在籍し、銀行経営の機微を知り尽くしている。特に地域銀行については、プロファイリングと呼ばれるデータ分析を基に経営に厳しい注文を付けてきた。森氏なら、ぬるま湯に浸かった地銀は退場すべきとの厳しい姿勢をとる、と地銀は怯えています」(地銀幹部)

 今、銀行関係者たちの間でベストセラーになっているのが、『捨てられる銀行』(講談社現代新書)だ。

「共同通信社の現役金融庁詰め記者で、森長官に深く食い込んでいる橋本卓典氏が上梓した。本では、森氏は改革の旗手としてヨイショされています。この本から、森氏の本音が透けて見えると言われています」(同前)

 実際、森氏は“捨てられる銀行”の選別に着手し始めた。銀行経営をベンチマークと呼ばれる55項目の指標で評価し、その結果を公表。出来の悪い銀行は社会から指弾される仕組みだ。評価が低い経営者は捨てられる前に、再編に打って出るしかないと身構えている。

「森氏は金融庁の金融検査マニュアルが銀行の自主的な経営能力を奪ったと自己批判しつつ、これからは地域企業に寄り添って、付加価値をつける『リレーションシップ・バンキング』にならねばならないと言う。そのために、金融庁は育成庁になると言うのですが、結局、これも新たなマニュアルができるだけではないのか。育成の名の下に、ベンチマークという鞭で鍛え上げ、脱落する銀行は蹴落とされる。銀行界では、“森ヨットスクール”と悲鳴が上がっています」(金融関係者)

 細身の森長官は「体力的に長官は2年が限度」と周囲に漏らしているが、「3年在任した畑中龍太郎氏超えの4年長官」の声まで聞かれる。森氏の言う「金融育成庁」は、金融行政の夜明けなのか、それとも裁量行政の復活にすぎないのか。