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「人工知能が採用面接で人間を見抜く時代」の欺瞞と憂鬱

だからバブルは繰り返す

2017/06/08
note

あらゆるデータ分析は泥臭い作業の連続である、という本質

 その点では、ビッグデータもクラウドもIoT(モノのインターネット)も人工知能も、寄せては返す波のように概念先行型の流行り言葉としてメディアの埋め草的に持て囃されているだけなんじゃないかとさえ思います。実際に、流通や小売向けのデータ分析などを仕事にしている先に投資をしていると、みんな夢を見てこの世界に入ってきているように思うんです。なんか凄いコンピュータ相手に天才プログラマーがロジック組んでプログラム作って、という世界と誤解されやすい。でも実際に現場で起きていることは、スーパーで働いているパートのおばさんにバーコードの分類をきちんと教えて一日単位ではなく一日数回のモノの動きと在庫管理を連動させるとか、本部から人を出して、新しい店舗にやってきたお客様をランダムで選んで歩く後ろを尾行して、店内をどううろうろして何を見てどう買っていったかをチェックするとか、そういう泥臭い作業の連続ですよ。

©iStock.com

 さらには、人工知能を具体的なシステムの中に入れるよ、となったら、いま稼働しているシステムにデータを連携させたり、きちんと稼働するまでデバッグを繰り返すという超めんどくさい仕事ばっかですよ。私なら発狂する。それでも3年とか5年とか取り組んで、やっと在庫が管理できて廃棄ロス減ってきたねとか、配送センターから効率よくトラックを出せるようになったねとか、そういう話です。

 そういう七面倒くさい現場作業の繰り返しであることが分かると、きっと人工知能という呪文にやられていた人たちは夢から醒めて正気に戻る……のではなく、おそらくは次の新しいキーワードが紡ぎだすバラ色の未来に夢中になるんだと思うんですよね。これぞバブルの歴史、人間は欲望の塊であって、現場力のない人が上っ面だけ眺めて漂う世の中になるのでしょう。

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 真顔で「人工知能が人間を見抜く」という人がもしいたら、少なくとも現段階では儲け話に弱い、何かに騙されやすい可哀想な人だ、ぐらいに思っておいて損はないと思います。人工知能は儲かると騙されて投資した私が言うんだから間違いありません。期待して損した。金返せ。

©getty
「人工知能が採用面接で人間を見抜く時代」の欺瞞と憂鬱

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