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連載THIS WEEK

ダラス警官銃撃
根深い人種問題は米大統領選に影響

source : 週刊文春 2016年7月21日号

genre : ニュース, 国際

現場はケネディ暗殺現場と近かった
Photo:Kyodo

「警官が撃たれたのか!?」

「イエス、4人倒れた!」

「スナイパーが上のどこかにいる!」

 7日夜、米テキサス州ダラスで発生した警官の狙撃事件。当時の様子を一般人が撮影した動画では、けたたましいサイレンが響く中、緊迫したやりとりが記録されている。

 犯人の黒人男性マイカ・ザビエ・ジョンソン(25)は、ビルの上層階や地上を次々移動しながら警官を狙い撃ちし、計5人が死亡、7人が負傷。警察の説得に「特に白人警官を殺したい」と応じず銃撃を続けたため、ロボットが装着した軍用プラスチック爆弾で殺害された。

 事件は、その数日前に立て続けに発生した、白人警官による黒人射殺への抗議デモの最中に起きた。射殺された男性の恋人が一部始終をインターネット動画で公開、黒人社会の間で怒りの声が広がっていたが、マイカは自身のフェイスブックに、60年代に結成された黒人民族主義団体「ブラックパンサー党」を支持する書き込みをしていた。

「マイカは陸軍の予備役兵として13年11月から半年間、アフガニスタンに派遣され、銃器の扱いには慣れていました。しかし、隊内に友達は少なく、女性上官への性的ハラスメントで訴えられ、任を解かれて帰還。その後、白人への憎悪が高まったと報じられています」(在米ジャーナリスト)

 今回の事件は、米国の人種問題を改めて浮き彫りにした。

「50年代からの公民権運動を経て、一部の黒人は社会的地位を向上させましたが、白人社会との心理的断絶には根深いものがあります。今回の事件についても、批判が大半ですが、黒人社会の一部からは『よくやった』という本音も聞こえてきます」(同前)

 ジャーナリストの堀田佳男氏は「米大統領選への影響も避けられない」と指摘する。

「事件後、民主党のヒラリー候補が黒人社会への配慮を求める演説をした一方、共和党のトランプ候補は、警察権力の増強や銃規制の緩和を訴えています。こうした事件が起きると、米国ではむしろ、銃の購入が増える傾向にある。11月に行われる投票は、数パーセント内の僅差の戦いになると見ています」

 英国のEU離脱同様、どちらが勝っても社会に深刻な溝が残りそうだ。