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ジャズ・ピアニスト山中千尋「巨匠モンクの音楽に全力で向かっていく」

クローズアップ

 

「モンクは、16歳のときに初めてレコードを買ってからずっと聴き続けています。彼の持つ自由さ、破天荒さ……。型にはまらない音楽観を今作ではオマージュしたかった」

 6月21日にジャズの巨匠、セロニアス・モンクの生誕100年記念アルバム、『モンク・スタディーズ』をリリースするのは、ピアニストの山中千尋さん。「ルビー、マイ・ディア」や「クリス・クロス」など、モンクの曲を時に力強く、時に情緒的なタッチで、歌うように演奏している。

「モンクが管楽器を起用したパートはシンセサイザーやハモンドオルガンで演奏しました。ドラムスとベースはフライング・ロータスやザ・ルーツの音楽で活躍している、最先端のミュージシャンです」

 だから、1950年代に生まれた曲でも、最新のサウンドに聴こえる。ジャズなのに、ポップ性を強く感じる。知的で高度なのに、上質のエンタテインメントとして楽しめる。

「クラシック、ロック、ブルース……。どの音楽とも地続きなのがジャズの魅力です。それで、今回のようなアプローチができました」

 このアルバムでは、3曲、オリジナル作品もレコーディングしている。

「唯一無二の個性を持つ巨匠の音楽に、全力で、息を切らせながら向かっていくイメージで演奏しました」

 山中さんがそう語るのはオリジナルのうちの一曲「ハートブレイク・ヒル」だ。

「タイトルはボストン・マラソン30キロ付近の難所、“心臓破りの丘”のことです。坂をぐんぐん上っていく。めまいや息苦しさも感じる。それでも力強く走り切ると、希望が待っている。そんなコード進行、演奏になりました」

 山中さんはずっと、ニューヨークを拠点に音楽を行っている。そして2年前から、自分自身もピアノ科首席で卒業したボストンの名門、バークリー音楽大学で教鞭を執っている。2都市を往復するスケジュールを縫うように、世界各国で演奏する日々だ。

 アメリカの学校が休暇に入っている6月、7月は、つかの間帰国中。そのタイミングで、『モンク・スタディーズ』発売日の6月21日、東京の紀尾井ホールで「文春トークライブ」に出演する予定だ。

「紀尾井ホールでは、グレン・グールドからポール・マッカートニーまで、私がリスペクトし、音楽家としての血肉になっている5人のピアニストについてご紹介します」

 皆どこが魅力なのか。どこが聴きどころなのか。実演を交えて話す貴重な企画だ。

「アルバムのリリース日の夜に行うトークライブなので、新作もたっぷり演奏しようと準備中です。モンクの曲も、『ハートブレイク・ヒル』も、客席でぜひライヴ体験していただきたい。日本のステージでは初披露です」

やまなかちひろ/群馬県桐生市出身。米バークリー音楽大学ピアノ科首席卒業後、2001年に『Living Without Friday』でアルバムデビュー。その後20枚のアルバムをリリース。6月21日に新作『モンク・スタディーズ』リリース予定。バークリーでは教鞭も執る。

INFORMATION

『モンク・スタディーズ』(ユニバーサルミュージック)
初回限定盤3,996円(DVD付)、通常盤3,132円

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